上司からの指示を誤って解釈し、トラブルを起こしてしまった。あるいは、部下に資料作りを命じたものの、提出された資料はこちらの意図するものではなかった、というような経験は誰しもあるだろう。
日本人同士でさえあることなのだから、日本語が十分でなく、文化的背景も異なる外国人であれば、そのようなミスコミュニケーション(ミスコミ)が多発することは容易に想像できる。
もちろん、相手が外国人であればゆっくり話すなどの気遣いをするだろうが、永らく日本人だけで過ごしてきた職場では、外国人労働者に対しても日本人と同じようなコミュニケーションを取りがちである。日本人同士であればたとえ言葉足らずであっても、それほど問題は生じないかもしれないが、相手が外国人だと思わぬトラブルが発生する可能性がある。
たとえば、9時始業といえば、日本人であれば9時前には席についているのが常識だが、外国人の場合は9時に会社に来ればOKと考える人がいるだろう。また、NOのつもりで「いいよ」と言っても、YESの意味で受け取られることもあるだろう。
指示したことが真逆に受け取られれば、結果はまったく違うものとなる。ちょっとしたミスが会社の信用を損なう事態にまで発展しかねない。
前置きが長くなったが、そのようなミスコミを防ぐための動画教材を経済産業省が作成し、ユーチューブで公開している。「日本人社員も外国籍社員も職場でのミスコミュニケーションを考える」というタイトルで、上に述べた「5分前行動」や「Yes/Noがはっきりしない表現」など、実際に起きがちなミスコミを事例で示し、解説を加えるというものだ。動画は20編あるが、ほとんどが解説を含めて2分程度なので気軽に閲覧できるのがポイントだ。また、企業研修で活用できるよう「学びの手引き」などのツールも充実している。
動画をご覧いただくとわかる通り、取り上げられているテーマは、外国人とのコミュニケーションだけでなく、日本人間であっても、あらためて留意しておきたいものが多い。その意味で、新人マネジャーや新人リーダー研修にも使える内容である。
ケーススタディ動画も参考になるが、最初にある有識者インタビューも是非ご覧いただきたい。制作に携わった方が本動画の狙いとして、
・気づくこと
・歩み寄ること
の重要性を指摘している。この2つがミスコミを解決していくためのポイントといえそうだ。
まずは違いやギャップがあることに気づくこと、その上で、互いにより良い方向に向けて歩み寄ること、言われてみればダイバーシティマネジメントの要諦でもある。多様性をもった人たちが協働していくには、適切なコミュニケーションが不可欠なのだから、両者が同じになるのはごく当然といえる。
ミスコミの解消は日々のマネジメントの適正化だけでなく、多様性の理解、また、互いにわかり合えることの喜び、さらには多様性が生み出す企業の創造的発展にもつながる。波及効果は大きいので、あらためてその重要性を認識していただければと思う。