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役員定年制の導入

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2021年01月08日

 定年を廃止する企業も増えてはいるが、まだまだ社員に定年を設けるのが一般的である。では、役員に対する定年はどうかといえば、その導入状況は次のとおりだ。

・1,000人以上 71.4%
・300~999人 58.8%
・300人未満 20.9%
(労務行政研究所「2016年役員報酬・賞与等の最新実態」)

 大企業・中堅企業では導入が進んでいることがわかる。一方、中小企業で割合が低いのはオーナー企業が多いためと考えられる。2015年の産労総合研究所の調査によると、全体として導入企業は増加傾向にあるという。

 役員定年制のメリットとしては、以下を指摘できる。

①経営者の新陳代謝を自動的に進められる。
②特に代表取締役が長く留任すると、周囲がイエスマンばかりになったり、社員が思考停止状態に陥ったりする危険があるが、これを回避できる。
③社員に定年制がある場合、公平性が保たれ、組織としての一体感を高められる。

 どんなに有能であっても加齢とともに体力・知力の低下は避けられない。ただ、経営者となれば大きな権力を持つので、たとえ弊害が目立ち始めても周囲は止めづらい。これを「強制終了」できるのが最大のメリットといえるだろう。一方、デメリットは以下のものである。

①有能かつ必要であっても退任せざるを得なくなる。
②後継者として適切な人材がいない場合がある。
③実績が伴わなくても、定年まで任期を全うさせる温情が生じる可能性がある。

 ①②のリスク回避方法として、特別の場合は定年延長ができる旨を役員規程等に定める企業もある。また、②の事態とならないよう、後継者の育成はトップの重要な仕事になる。定年があるからこそ、育成に力を注がなければならない。
 ③は、定年制が定年年齢までの”雇用保障”となってしまうケースである。本来は切るべき役員であっても、「あと1期で定年だから」と再任させることは十分にありうる。回避のためには、役員としての業績評価を明確にするなどの厳しさが求められるだろう。

 導入にあたって、「定年を何歳にするか?」というのも主要な検討事項である。役位ごとの定年年齢の分布で、1番目・2番目に多いのは次の通りだ。

・会長 70歳(50%)、67歳(15%)
・社長 65歳(35.7%)、68歳(21.4%)
・専務 65歳(34%)、63歳(20%)
・常務 65歳(28%)64歳・63歳(18%)
・取締役 65歳(26.5%)、63歳(24.5%)
(労務行政研究所「2016年役員報酬・賞与等の最新実態」)

 社長以下は65歳が最も多い。社員が勤務を続けられる年齢に合わせることで、社員との一体感の醸成を企図していると考えられる。まずは基本の案とすべきだろう。ただ、本年4月からの70歳までの就業確保措置の実施に伴い、役員定年もいずれは70歳が主流となりそうである。

 役員定年制と併せて”役員任期制”を取り入れる企業もある。たとえば、役員の最長任期を5期(10年)までとし、定年年齢または最長任期のどちらかに至った時点で退任するという仕組みである。役員の新陳代謝をより強く促すシステムとなるが、若くして役員となるような優秀な人材にとって厳しい制度といえ、採用する企業は少ないとみられる。

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