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環境激変時の人事評価

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2020年07月01日

新型コロナウィルス感染拡大により経営環境は激変した。業績への影響も多大なものがあるはずだ。そうなると、人事評価にも大きな影響がある。特に、業績評価をどうするかは大きな課題となる。

 今回のコロナウィルス禍以外にも、地震や台風などの自然災害、不祥事によるイメージダウン等で業績が大きく悪化することがある。このような環境激変時の人事評価をどうするかを能力・行動評価と業績評価に分けて考えてみよう。

 まず、能力・行動評価だが、これは環境激変時であっても、それほど変わらずにできるはずだ。今回もそうだが、緊急時・異常時には、本来の人間性が顕著になることが指摘される。仕事においても、変化への対応の仕方や困難な状況における態度・姿勢など、社員本来の持てる能力が浮き彫りとなる。そういった意味で、能力・行動評価には影響は少ないと考えられる。もちろん、緊急・異常の程度にもより、あまりに過酷な状況での社員のマイナス行動は評価すべきでないのも確かである。
 
 次に業績評価は大きく、1.通常のルールで行う、2.特別なルールを設ける、3.評価を中止する、という3つの選択肢がある。それぞれ見ていこう。なお、事例はSABCDの5段階評価を想定する。

1.通常のルールで行う
 業績評価においては、多くの企業では業績(成果)をそのまま評価するのが原則になっていると思う。したがって、異常事態であってもこれまでと同じに評価するという考え方だ。

 たとえば、営業職のKさんの今期(1月~6月)の目標売上高は1億円であったが、コロナの影響で後半はまったく伸びず、半分の5千万円となってしまった。評価基準に当てはめると、目標値の70%未満は最低評価のDなので、D評価にするという具合だ。

 企業によっては、上記を原則としつつ、逆風が吹いたときには上司の裁量で加点評価ができるなど、何らかの救済措置を設けているところもあるだろう。その場合は、本来はDだがCとするなどの措置もありうる。

2.特別なルールを設ける
 会社全体で何らかの救済措置をとる方法である。たとえば、今回に限り、全員1ランク上の評価とするなどだ。この場合は、基準に当てはめてD評価であればCとなり、B評価であればAとなる。次に示す「全員B」に比べてメリハリがつくが、変化の影響を受けやすい部署(営業部門が典型)が、そうでない部署(管理部門が典型)に比べて低評価となる恐れがある。

 それを回避するために、変化の影響のあった部署、あるいは社員だけを救済するというやり方もある。ただ、その選別は難しく、救済されなかった部署・社員の不満を高めかねない。特定の部署・社員に特に大きな打撃があり、その救済のためなら止むを得ないとの全社的な理解が得られるような場合を除いて、避けた方が無難だろう。
 
3.評価の中止
 3つ目は、今期はまともな評価ができないので業績評価をしないという選択である。理由として、現場の復旧や業務の立て直しなど、現業を優先させるためというのもある。このとき、能力・行動評価も含めて中止という選択も考えられる。会社存亡の危機にあって、評価どころではないということだ。評価中止の場合は、評価は無し、あるいは全員Bということになるだろう。

 その派生形として、今期の評価全部を中止するのではなく、一定期間(たとえばコロナ禍が顕著となった4月以降)をサスペンド(停止)するというやり方もある。つまり、3月までの業績でもって評価を行うということだ。一定期間が妥当に決められ、期間途中での業績評価が可能であれば、考えられる手法である。

 どれを選ぶかは、会社業績の状況、部署ごとの影響度合いの相違、個々の業務への影響、社員のモチベーションへの影響などから判断することになる。

 たとえば、特例で一律1ランク上の評価にするのはよいが、賞与支給額が増えたり昇給額が大きくなったりして、悪化した財務状況がますます圧迫されることになるかもしれない。

 一方で、このような激変時は社員の負担も大きい。身体的・精神的な不安を抱えながらも何とか頑張っているところに、通常通りの評価をした結果、低評価となるとモチベーションの著しい低下が懸念される。

 環境変化がどの程度企業経営に影響を与えているか、社員の仕事やモチベーションにどれほど変化や負荷があるかを踏まえ、バランスのよい対応が必要である。

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