正月ということで、「こんなのがあったらいいな」と普段考えている制度のご紹介を…。
人事評価を実施するうえで重要な原則の1つに加点主義がある。短所ばかりでなく長所を積極的にとらえ、評価していきましょうというものだ。
ただ、業務を適正にマネジメントしようとすると、部下の悪い点ばかりが目に付き、注意や指導が多くなるのも事実だ。評価の際には、部下のミスや失敗が次々と思い浮かび、どうしても減点主義に陥りがちである。
評価だけならまだしも、今度はそれを部下にフィードバックしなければならない。良い評価はともかく、悪い評価は伝えづらい。どのように伝えればよいかと上司は面談前から憂鬱になる。
一方、部下の方もあれこれ指摘されて気分がよいはずがない。「まあ来期は頑張ってくれ」と形だけのフォローをされても、少しもモチベーションは高まらない。互いに貴重な時間を割いてやっているのに、どうして上司も部下もイヤな思いをしなければならないのか‥‥。
ということで、提案したいのは“プラスだけ”の人事評価である。ルール・仕組みは次の通り。
・S~Dの5段階評価だとすると、SとAだけを評価する。
・B~Dは同じ扱い。つまり、普通レベルよりも優れた項目をだけを評価する。
・フィードバックにおいても原則SとAだけを伝える。
・評価シートで示せば、たとえば「コミュニケーション力」という項目に対して、特に優れていればS、優れていればA、それ以外は「-」を記す。
・すべて「-」の場合は、相対的に優れている項目をフィードバックする。
“プラスだけ”人事評価のメリットは次のとおりだ。
①上司にとって、評価・フィードバックが非常にラクになる。
②プラスに目が行くので、社員のモチベーションや職場のムードの向上が期待できる。
一方、デメリットと考えられるのは以下の2点。
①普通以下の社員を全員同レベルと判断することになるため、報酬等への反映の仕方が難しい。
②「できていないこと」が不明確となり、改善や向上が期待できなくなる可能性がある。
制度のスタンスとしては、これらのデメリットにはある程度目をつむり、それを上回るメリットを期待しようということだ。なお、デメリット②に関して付け加えると、部下のミス等は評価対象とはしないが、日常的に見過ごすということでは決してない。普段の業務の中で、必要な注意・指導をしていくのは当然である。また、職場規律違反や業務命令違反などがあればもちろん懲戒対象となる。
正直、思い付きにすぎないが、こうしてあらためて整理してみると案外有効な仕組みではないだろうか。一般の評価制度に比べて、確かに穴は多いかもしれないが、それを補う以上の効果がありそうである。ユニークな人事制度を考えている企業があれば、一度、検討してみてはいかがだろう。