新年おめでとうございます。働き方改革が本格始動するなか、素晴らしい1年になりますよう、今年もよろしくお願い申し上げます。
さて、年が明けて人事評価に入る企業も多いと思う。評価シートには、1次・2次評価者それぞれが評価について意見・所感を述べる「評価コメント欄」がある。そして、この評価コメントを苦手とする評価者がたくさんいる。
苦労の挙句、「真面目に業務に取り組み、後輩指導も熱心であった。引き続き、課の業績向上のために貢献していただくことを期待する」など、当たり障りのないコメントでお茶を濁したり、どの部下にも同じようなコメント、要は“コピペ”で対応したりするケースも見られる。
確かに、部下が数十人もいる場合などに、おざなりのコメントとなるのも仕方ないかもしれないが、単なるコメント欄の”穴埋め”に終始すれば、読み捨てにされてしまって、その苦労すら無駄になりかねない。ここはやはり、可能な限り有効なコメントを記し、努力が報いられるようにしたいものだ。
実践に向けてまず大切なのは、評価コメントの目的を理解することだ。コメントの基本的な目的は、①評価に関する情報、②被評価者の育成のための情報、この2つを整理・提供することである。
評価に関する情報は、自分がなぜこのような評価をしたのか、その正当性を2次評価者、人事等の担当部門、そして最終的な人事権を持つ経営者に伝えるためである。これにより、会社は評価が適正に行われているかどうかを確認する。被評価者の育成のための情報は、評価を踏まえて被評価者をどう育成していくかを上記関係者に知ってもらうためである。これにより、会社は人材が育っているかどうかを確認する。したがって、その内容は1次評価者の場合、
ア.自分の下した評価の根拠、特に普通よりも良いまたは悪い評価(S~Dの5段階評価の場合のS・AあるいはC・D評価)のときの根拠
イ.特に改善すべき項目、特に目立った行動や業績
ウ.これらを踏まえての今後の取り組み課題や行動目標
エ.上司としての指導方針や支援事項
などとなる。アが①に関する情報、イ~エは②に関する情報である。具体的な記述の仕方を示すと以下のようになる。
「〇〇業務について、量が増えたにもかかわらず段取り良くミスもなくこなしたので業務遂行力をAとした。積極性に関して、新規案件を担当する機会が何度かあったが、率先して手を挙げることがなかったのでCとした。来期、改善を促したいのは積極性である。新規案件を進める力はあるのだから、積極的に参画してほしい。その機会を今期よりも多く与えるつもりである」
また、2次評価者の場合は、
ア.1次評価に対する意見、特に担当組織全体から見た評価の妥当性
イ.1次評価者の評価と異なる場合の根拠
ウ.担当組織全体から見て特に改善すべき項目、特に目立った行動や業績
などとなる。イについて、1次評価者の評価と2段階異なる場合(たとえばS評価をB評価とする場合)は必須とすべきだろう。具体例としては次のようになる。
「〇〇部全体から見て、やや甘目の傾向があったため、責任性と判断力はBとした。いずれも満足のいくレベルにあるが、着眼点に満たない行動も見られ、優れたレベルともいえない。◇◇プロジェクトがうまくいったのは、コミュニケーション力の高さによるものが大きい。特に親しみやすい話し方は、対人関係構築の大きな武器となるので今後も伸長させたい」
記述にあたっては、まず①の評価に関する情報を優先するようにしたい。したがって、コメント欄が小さく字数が限られる場合は、①だけとなってもやむを得ない。まずは評価の妥当性を確認するのがコメント欄の最大の役割と認識すべきだ。
冒頭に漠然としたコメントでお茶を濁すケースを示したが、一方で、部下の優秀さを熱心に訴えたり、具体的な出来事を丹念に記したりする評価者もいる。ただ、その内容が評価コメントとしてピント外れになっているものも多く見られる。
上記を参考に、目的に合致した記述をすることで、効果的な評価コメントを作成していただければと思う。それは同時に、コメント作成作業の効率化にも役立つはずである。