2018年が明けた。今年は働き方改革の法制化がどうなるか、企業の生産性革命は進むのかなど、人事関連からも注目したいテーマが多々ある。
ところで、年明けは春闘開始の時期でもある。実際に労働組合と交渉するかどうかはともかく、ベースアップ(ベア)を考える企業も多いだろう。
ベアとは、賃金表の改定により賃金水準を引き上げることである。ただし、下記に述べるとおり、必ずしも賃金表でなくても、一定要件により支給される給与や手当の増額などもベアに含まれる。
1990年代前半まで、多くの企業でベアは実施されていたものの、経済成長の停滞とともに徐々に行われなくなり、特にリーマンショック以降、実施企業は1割にも満たなくなった。その後、景気の回復や政府主導の”官制春闘”により、2014年頃から再度「ベア」という言葉を耳にしだしたのは周知のとおりである。
経団連の「2016年人事労務に関するトップマネジメント調査結果」によると、2014年から2016年にかけて、3年連続で実施した企業は31.2%であり、2回実施は19.5%、1回実施は18.0%、0回は31.2%と、7割は1回は実施していることがわかる。
また、日経新聞の2017年賃金動向調査によると、ベア実施企業の割合は72.8%(前年73.9%)とのこと。 あくまで大手企業中心だが、ベアが普通に行われるようになってきた感がある。
それはともかく、「失われた20年」はベアのない20年とも重なる。ベアを復活しようにも、人事担当者の中には、その経験がなく実施方法を知らないという方もいる。
ベースアップの方法として代表的なのは以下のものだ。
① 一律定額配分方式
一定額(たとえば3,000円)を一律に増額するもの。この場合、低賃金者は高賃金者に比べて増加率が大きくなるため、低賃金者にとって有利といえる。
② 一律定率配分方式
一定率(たとえば1%)を一律に増額するもの。増加額は等級・号俸ごとに異なることになり、高賃金者にとって有利となる。
③ 重点配分方式
たとえば、若年層の多い等級は4,000円(あるいは2%)増額、それ以外は2000円(あるいは0.5%)増額するなど、特定の層に対して政策的に重点配分するもの。
④ 業績査定配分方式
業績給など、業績に応じて支給される給与・手当を増額するもの。
⑤ 職務・資格別配分方式
職務給や資格給などに応じて支給される給与・手当を増額するもの。
先の経団連の調査によると、それぞれの採用割合(複数回答)は、次のようになっている。
① 45.5%
② 11.7%
③ 39.5%
④ 16.0%
⑤ 29.6%
①が好まれるのは、ベアが物価上昇に伴う賃金改善という意味で理解されていることが大きな要因だろう。生活給としての賃上げなので、社員一律に同額引き上げるのが最も合理的ということだ。
③の重点配分も人気があるが、内訳をみると、下記のように明らかに若手重視の姿勢が見える。
・若年層(30歳位まで)へ重点配分 24.4%
・中堅層(30~49歳位まで)へ重点配分 8.0%
・ベテラン層(50歳以上)へ重点配分 1.9%
・子育て世代へ重点配分 5.2%
人手不足が深刻化するなか、若年層の雇用維持は重要課題となるはずで、上記の傾向は、ますます強まることが予想される。ベア復活といっても、ベテラン層は恩恵をあまり期待しない方がよいといえそうである。