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労働時間適正把握ガイドライン

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2017年07月07日

働き方改革は一大ブームの様相を呈しており、その主要策として、長時間労働の是正に取り組む企業も多い。労働時間が長いというだけでブラック認定を受けかねず、優秀な人材確保のためにも、時短はちょうどよい課題なのかもしれない。

ところで、長時間労働の是正のためには、まず、きちんと労働時間を把握しなければならない。

これに関し、今年の1月、労働時間を適正に把握するためのガイドラインが厚生労働省にて新たに策定された。従来の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」に代わり、使用者が講ずべき措置を具体的に定めたものである。名称が「基準」から「ガイドライン」となったほか、内容がいくつか追加されている。これまでの「基準」との相違点を中心に概観してみたい。

まずは、従来の「基準」にはなかった”労働時間の考え方”の追加である。これまでの判例等を踏まえ、「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」と労働時間の定義を示したうえで、次のような時間は、労働時間として扱わなければならないと具体的に示している。

① 所定の服装への着替えなど業務に必要な準備行為や、清掃など業務終了後の後始末の時間
② 使用者の指示があれば、すぐに業務に就かなければならない待機時間
③ 参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

この中で特に注目したいのは、③の後半部分である。上司が部下に「〇〇について勉強しておいてほしい」と言うのはよくある。これに従って勉強するのは、一般的には自己啓発の領域だが、指示・命令のニュアンスが強く、事実上の強制であれば労働時間になりうるということだ。

次に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」の「始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法」として、従来の「タイムカード、ICカード」に「パソコンの使用時間」が追加されている。近年の労働時間管理の実態に合わせたものだろう。

そして、最も多くの変更・追加がなされているのが、「自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」である。自己申告に基づいて労働時間管理を行う企業が多く、“不正の温床”となっている実態から、特に多くの見直しが加えられたものと思われる。

ポイントをまとめると、

① 「実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと」の追加
② 従来の実態調査の実施に加え、「所要の労働時間の補正」を要求していること。特に、「入退場記録やパソコンの使用時間の記録」と「自己申告の労働時間」とに著しい乖離があるときは、調査・補正を行うよう具体的に要求していること
③ 「自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること」の追加
④ 「労働基準法の定める法定労働時間や36協定により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること」の追加
⑤ 「賃金台帳の適正な調製」の追加

以上のように、労働時間管理が不適切な企業の実態を踏まえ、その是正策をより具体的に示したのが新ガイドラインの特徴である。
企業からすると、従来よりも厳しい内容になったといえるが、今の時代、当然に必要なことと受け止めるべきだろう。
ブラック企業の跋扈や過労死の問題を背景に、国をあげて働き方改革が進められるなか、労働時間管理はこれまで以上の厳格さが求められている。当ガイドラインは、その取扱い基準となるものなので、企業としてもしっかりと認識しておく必要がある。

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