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評価の公平性と納得性

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2017年01月06日

人事評価についてアンケートをしたとき、必ず出てくるのは評価の公平性や納得性に対する不満である。評価の公平性と納得性の確保は、評価を行うあらゆる組織の課題といえる。ヒトがヒトを評価するため、完璧な確保は不可能だが、そこに向けての努力はしなければならない。

ところで、「公平性と納得性」という形でひとくくりにされるが、両者は異なる。

公平性とは、誰が行っても同じ評価になることで、簡単にいえば評価のバラツキをなくすことだ。一方、納得性とは、文字通り評価を受けた側が自分の受けた評価に納得することである。

公平であることは、納得性に大きな影響を与えるが、公平だからといって必ずしも納得するわけではない。たとえば、公平な評価の結果、低評価となった社員がそれに納得するかどうかは別問題である。納得できるかどうかは、評価制度や評価者に対する信頼性、評価者のフィードバックの仕方などに大きく関わってくる。

以上を踏まえた上で、人事評価の公平性と納得性を高めるための重要事項をチェック形式で整理してみたい。ポイントは次の5つである。

1.評価制度の適切性
① 評価項目が妥当であるか
当該企業や部門、等級、役職の評価項目として妥当性があるかということだ。たとえば、部下のいない一般社員に「人材育成力」を問うのは無理があるし、管理職に「規律性」を求めるのも必要性は低いだろう。また、製造業の親会社の制度をサービス業の子会社がそのまま流用するなど、仕事内容と評価項目とがフィットしていないものを見かけたりする。妥当性のない評価項目で評価をされても社員は納得できない。
② 評価項目の定義や着眼点、行動例等がわかりやすいか
定義があいまいであったり、着眼点や行動例が実務とかけ離れた記述であったりすると、評価者にはわかりづらく、結果としてバラツキが生じることになる。
③ 基準が明確で、わかりやすいか
基準があいまいだと、評価者が自分のイメージで基準を適用することになり、評価にバラツキが生じる。

2.評価スキルの向上
① 評価者研修等によりスキル向上が継続的に実施されているか
公平性と納得性を確保するには、評価制度の理解、評価の仕方の理解、基準の統一、の3つが必要である。これを担保するために継続的な評価トレーニングが欠かせない。
② 評価結果に関する情報提供やアドバイスがなされているか
評価スキル向上のためには、評価者が自己の評価傾向を認識しておくことが大切である。そのために、人事部門等が評価結果を分析して情報提供をしたり、評価者に個別のアドバイスしたりすることが求められる。

3.フィードバックの適切性
① 評価項目や基準がオープンにされているか
評価のフィードバックは納得性を高めるために不可欠と言えるが、公平性にも大きな影響を与える。部下にフィードバックするとなると、評価者はいい加減な評価はできなくなるからだ。前提として、まずは評価項目や基準が全社員に公開されている必要がある。部下からすると、どのような制度かを知らないのに結果をフィードバックされても高い納得性は得られない。
② 評価結果のフィードバックが行われているか
フィードバックにもいろいろな段階がある。企業によっては最終的な総合評価のみを伝えるところもあるが、納得性の観点からは、項目ごとの評価までフィードバックすることが望ましい。
③ 研修等によりフィードバックスキルの向上がなされているか
評価スキルと同様に、フィードバックも基本知識や方法を学ぶことでスキルを高められる。

4.適切な職場環境
① 評価者と被評価者の信頼関係があるか
② 社員を大切にしたり、人材育成を重視したりする組織風土があるか
殺伐としたブラックな職場環境では、どのような立派な評価制度を導入しても、公平性や納得性は期待できないだろう。職場環境や上司と部下の人間関係は、適正な評価に大きく影響する。

5.評価結果の活用の適切性
① 報酬への反映は適切に行われているか
② 昇進・昇格への反映は適切に行われているか
評価制度そのものではないが、評価結果をどのように活用するかにより、評価制度の信頼性は変わってくる。たとえば、評価結果にかかわらず報酬が大して変わらないのであれば、評価など、どうでもよくなるだろう。

以上、特に重要な項目を整理してみた。公平性や納得性に大きな課題がある企業は、どこかに欠落や不足、不備があるはずである。見直しに向けて、参考にしていただければと思う。

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