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配偶者手当の見直し

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2016年09月02日

女性の就労を後押しするためにさまざまな施策が練られているが、その1つが配偶者手当の見直しである。

厚生労働省では、「女性の活躍推進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」を開き、4月に報告書を提出している。
また、8月には、人事院から国家公務員の現行13,000円の配偶者手当を18年度までに半減するよう勧告がなされた。

企業は、一定収入以下の配偶者を持つ社員に配偶者手当(一般的な名称は「家族手当」「扶養手当」が多いと思う)を支給する例が多いが、支給基準のほとんどが「103万円」または「130万円」となっており、主婦の就労意欲を損なっている実態を受けてのことである。

平成27年の就労条件総合調査によると、家族手当(扶養手当、育児支援手当含む)の支給額は企業平均で約17,300円/月となっており、「配偶者手当」で考えると1万円~1万5,000円くらいが相場ではないかと思う。
下手に数時間余分に働いて、これがもらえなくなるよりは、労働時間を抑制して、支給対象となるのは合理的な選択である。

「103万円」「130万円」の壁は、所得税の負担や配偶者控除、社会保険料負担も関係するため、配偶者手当がなくなったからといって就労時間が一気に増加することはないだろうが、就労を促す大きな要因になるのは間違いない。
特に配偶者控除が廃止されれば、壁はなくなったのも同然であり、パートタイマーの就労時間はかなり増えることが予想される。
(※なお、本年10月から、年収106万円以上等の要件を満たすパートに社会保険加入義務が生じるので、一部のパートは「106万円の壁」となる。)

今後、配偶者手当の見直しが避けては通れない課題となるのは確実である。ただ、問題はどうやって配偶者手当を廃止するかである。

たとえばトヨタでは、これまで妻の年収が103万円以下の場合、配偶者など1人目の扶養家族に月19,500円、2人目以降に5,000円を支給していたが、これを子供1人あたり2万円にするとのことだ。
ただし、これだと、子供のいる社員はともかく、子供のいない社員は減額となり、不公平感があることは否めない。
他にもボーナスや基本給に反映させる企業もあるようだが、いずれにしても、手当の廃止というのはやっかいなもので、企業が人件費を増額させない限り、誰かが不利益を被る。

実施にあたっての基本的な対応としては次の3つである。

① 廃止の目的や企業としての考え方を明確にすること
配偶者手当の廃止であれば、「女性の社会進出の促進」など、万人が納得できる大義名分があればなおよい。
② 原資を減らさず、①に合致する形で他の費目に振り替えること
原資を減らせば人件費カットと思われ反発を受けるので、業績不振でない限りは、原則として原資はそのまま基本給・手当・福利厚生費等の他の人件費に流用すべきである。
上記の人事院勧告も、配偶者手当の削減分を子供への手当ての増額に回しており、扶養手当の総額は変わりはないとのことだ。
③ 社員にきちんと説明すること
「文句を言われるのはわかっているので、説明なしで導入する」というのは、最悪のパターンである。手当の変更は労働契約の変更であり、労働契約法の定めからも問題といえる。

①に合理性があることが前提となるが、上記を誠実に取り組めば、多少の不平・不満は出たとしても、大きくモチベーションが低下するようなことはないはずだ。もし、モチベーションが低下したのであれば、配偶者手当の見直しはきっかけにすぎず、その他の要因が積み重なってのことと考えるべきだろう。

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