今回は、これからの時代を勝ち残るための「法人営業のカギ」について書かせていただきます。突然ですが、「秒速85メートル」って何のスピードだか分かりますか?
実はこれ、F1マシンの平均スピードなんです。
時速にすると300キロメートルをゆうに超えるスピードで、私たちが運転する乗用車の10倍近くの速度です。きっと、一般の人には想像がつかない光景がそこにあるのだと思います。
◆F1でも営業でも、力が拮抗してきている時代
そんなF1レースをたまにテレビで観戦するのですが、そこでよく見かけるのが次のような光景です。
・順位がほぼ変わらずに周回が重なっていく
・順位どころか車間距離もほとんど変わらない状況が続く
私はこういった時の“緊迫感”が大好きなんです。
しかし、目まぐるしく変化する展開が好きな方には、じれったく感じるかも知れませんね。
このようないわゆる“膠着状況”が続く原因というのは、次のようにいくつか考えられる気がします。
・コース上で前の車を抜ける場所が限られている
・車の性能が極限まで進化して、大きな差がつかなくなっている
・ドライバーのテクニックも高いレベルに達していて、大きな差がつかなくなっている
要するに、競技そのものがある程度進化しきってしまい、結果的に競技者の力が拮抗してきている状況かと思います。
そして、これは法人営業でも同じことが言えるでしょう。
昨今では、営業担当者の“個人力”や商品サービスの“品質”だけでは差がつかなくなってきているのが現実なのです。
◆ライバルを一気に抜き去ることができるタイミングとは
そんな拮抗しているF1レースの中でも、順位がガラッと変わる瞬間があります。
それは、「ピット作業」です。
皆さんは、最近のF1レースでピット作業に費やされる時間をご存知でしょうか。
20秒でしょうか? 10秒でしょうか?
正解は……、なんと、2秒なんです。
私も何度か自分の車のタイヤ交換をしたことがありますが、どんなに頑張っても30分はかかってしまいました。
2秒という数字はもう、神業的な組織の仕事としか思えませんよね。
これもまた、法人営業において同じことが言えるでしょう。
昨今、求められる営業スタイルは、「組織営業」です。
個人での営業活動にばかり力を入れていますと、少しの変化で大きな影響を受けてしまいかねません。
しかし、F1のピットクルーのように組織で臨み、お客様企業との“会社対会社”の関係性を築くことができれば、ちょっとした環境変化が訪れても営業活動へのマイナス影響は最小限で済むのです。
◆勝つためには、綿密な事前準備が必要だ
先ほどは神業的な組織の仕事と書きましたが、そんなピット作業でも時々、失敗をしてしまうチームもあります。ちょっとした手違いやミスで、数秒の遅れが発生してしまうのです。
「たかが数秒」と思われるかも知れませんが、この数秒はF1の世界では致命的になります。
仮に3秒遅れると、秒速85メートルの世界では255メートルもの差になります。
何周もトップを走り続けてきたドライバーが、ピット作業のミスで大きく順位を落としてしまうことは決して珍しくありません。
F1レースにおいてはどうしてもドライバーやマシンにスポットライトが当たりがちですが、その裏側ではピットの方々が毎日汗をぬぐいながら戦いを繰り広げているのです。
きっと彼らは、ほんの1秒でも速くするため何日もかけた準備を進めているはずです。
実際に、F1界にはこんな格言が存在します。
「ドライバーやマシンで抜けないなら、ピットで抜け」
そして、これもやはり法人営業でも同じことが言えるのです。
効果的な組織営業をするためには「綿密な事前準備」が必要ですし、それに加え「人を巻き込んで営業活動を推進していく力」が必要になります。
◆組織力を高め、勝つためにやるべきこととは
では具体的に、組織営業における事前準備とはどのようなものがあるか書き出してみましょう。
- ・ターゲットを決める
- ・顧客分析をする
- ・戦略を立てる
さらに、人を巻き込む際にも大切な「勘所」が幾つもあります。
- ・巻き込む相手の事情を理解する
- ・ビジョンを共有する
- ・戦略を共有する
- 率先して動く
そして、事前準備の効率や人を巻き込む力を高める「教育」も大切だと思います。
そのためにもセールスパーソンへ積極的に「営業研修」を受講させることは一つの手段と言えるでしょう。
「組織営業」というのはこれからの時代を勝ち残る法人営業の鍵ではないかと私は考えています。
よいピットクルー達との効率的なピット作業を目指して、しっかりと準備を進めていきましょう。
※この記事は『アルヴァスデザインHP メンバーズ・コラム』に掲載された内容を転載しています。