2014年07月24日
マーサー ジャパン株式会社 年金・財務リスクコンサルティング 奥平 剛次
アクチュアリーという職業柄、死亡率に接する機会が多い。嫌な確率であるが、生命保険の保険料率や、年金の掛金や債務などを算出するうえで基礎となる重要な数値である。高齢化の進展や平均寿命の伸びなど、死亡率に関連する話題に接する機会は増えてきたものの、死亡率の数値自体を目にすることはあまりないかと思われるので、今回紹介してみたい。ただの数字の羅列のようでいて、じっくり眺めていると、様々な思いがめぐってくる。
下表は、厚生労働省が発表している最新の死亡率(第20回完全生命表より抜粋)である。これは、調査時点(平成17年国勢調査)に各年齢の人数のうち、何人死亡したかによって算出されている。まず目につくのが、0歳の死亡率の高さだろう。ただ、この数値は医療技術の進歩によりここ数十年で劇的に低下している。平均寿命の伸びも、この点による影響が大きい。平均寿命は、上述のとおりに作成された年齢ごとの死亡率を使用して、0歳児が平均的にいつまで生きられるかを算出したものである。つまり、仮に他の年齢の死亡率が変わらないとしても、0歳の死亡率が下がれば、その分だけ平均寿命が延びるということである。世界にはまだまだ医療技術が未発達で、びっくりするような平均寿命の国もある。それだけ乳幼児が命を落とす確率が高いということだろう。日本に生まれてよかったと改めて思う。女子の男子に対する死亡率の低さにも目を見張る。平均寿命に差があるのは認識している(第20回完全生命表ベースで、男子:78.56歳、女子:85.52歳)ものの、多くの年齢層で、男子に対して約半分程度の確率となっているのには驚かされる。女子の死亡率の低さについては、一般的に生物学的な要因と社会環境による要因とで説明されることが多い。どちらの影響が大きいのかは分からないが、後者が大きいとすると、上述のように直近1年間の実績に基づき算出されるこの死亡率が、女性の社会進出の増加に伴い今後どう変化していくのかが注目される。また、各年齢の死亡率について、単純に何%とみるのではなく、例えば、年始に生死をかけたくじを引くようなものだと考えると妙に実感がわいてくる。ちなみに筆者の年齢でみると、1000本に1本のくじを引いていることになり、ややリアルな確率になっている。禁煙しようか、毎日運動しようかとか、健康に思いをはせてみる。さらに筆者の親の世代でみると、100本に1本程度とかなりシビアなくじとなっている。またこの確率は年齢を重ねるごとに上昇のピッチが加速していく。今後も正月に元気な顔を見るには、このくじを何回もくぐり抜けていってもらわなければならない。今のうちに親孝行しなければと思う。
※本記事は2010年12月時点の記事の再掲載となります。
マーサー ジャパン株式会社 年金・財務リスクコンサルティング 奥平 剛次
大手信託銀行において、企業年金に関する制度設計、数理計算業務及び運用提案などの業務に従事。
マーサーでは、国内外企業における退職金・年金制度改革プロジェクトや退職給付会計計算に参画。
東京大学大学院都市工学専攻修了。
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