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採用面接の限界

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2016年05月06日

6月からの新卒者の選考活動解禁に向け、担当者の方は面接等の準備に忙しいと思う。もっとも中小企業や経団連非加盟企業ではすでに選考に入っており、加盟企業であっても実質的に選考を進めている企業も多いと聞く。

景気が不透明となる中、採用を抑制する企業もあるが、全体的な基調としては昨年同様の売り手市場が続いているようだ。
とはいえ、売り手市場だからといって企業は簡単に内定を出すわけにはいかず、やはり自社にマッチする有能な人材を見極めなければならない。人材の厳選は、労働市場の状態にかかわらず基本原則だろう。

問題は厳選したはずの人材が、まったく役に立たなかったり、非常識な言動で騒動を起こしたり、挙句にあっさり辞めたりすることである。
結果として、企業はますます学生の選別に躍起となり、その手法に工夫を凝らす。特に充実を図ろうとするのは面接である。

採用にあたって、面接を重視する企業は多い。2012年の経済同友会『企業の採用と教育に関するアンケート調査』では、「新卒採用の選考で特に重視するもの」で、大学院卒から高卒まで、面接が圧倒的な1位となっている。
また、マイナビの『2014年卒企業新卒採用予定調査』でも、「新卒採用において、学生の本質を見極めるのに良いと思う方法」のトップは「面接官1人に対して学生1人の長時間面接」である。

企業は人物本位とか人物重視という言葉が大好きで、それを面接で見分けようとするのである。

このように採用活動は面接抜きでは考えられないわけだが、面接による選抜手法が優れているかといえばそうでもないようだ。組織心理学において、面接では次の5つのエラー・問題点が起きることが指摘されている(参考:「産業・組織心理学」山口裕幸他著・有斐閣)。

①即時的決定
面接の際、学生はあがってしまったり、不慣れであったりして、本来の自分を出せないことがあるが、人間は第一印象に影響される傾向があるため、その誤った情報を元に面接者が判断をしてしまうこと。
②確証バイアス
履歴書や適性検査結果など、事前に得た情報から先入観や思い込みにとらわれ、その印象に応じた評価をしてしまうこと。学生が同じような回答をしても、有名大学と無名大学では面接者の受け止め方が違う、というのは経験的にありうる。
③不都合な情報
何かの間違いでダメな人材を採用してしまうのを避けるために、欠点や弱点をあらさがしするなど、学生にとって不都合な情報を重視してしまうこと。優れた長所を持つ学生も、たった1つの欠点で落とされてしまう。
④厳格化
面接官は、過去の経験から積み上げた高い理想像・基準をもっているため、ほとんどの学生は基準以下となるなど、評価が激辛になってしまうこと。結果的にかなり優秀な学生でも、ふるい落とされてしまう。人を見る目に自信のあるベテラン人事マンなどによく見られる傾向。
⑤非言語的行動
言語以外の、姿勢、身振り、表情、服装、容姿、化粧など、一般的に仕事に関する能力や意欲とは無関係な非言語的要素が評価に大きな影響を与えること。

学生側からすると、これらを認識のうえで面接に臨むのが成功の秘訣となるかもしれない‥‥。
それはさておき、もちろん企業も、このような問題が生じないよう、面接での視点や合否基準を打ち合わせておくなどの努力を行っているが、結局のところ、面接官の好みが大きな基準となってしまうのは避けられない。

人は自分と似たタイプを好むものだ。最終的に社長や役員の好みで決まった人材が、配属された現場で「???」となるのも仕方がない。数度の面接をクリアするということは、それだけいろいろな人に好かれるということで、これはこれで意味のあることかもしれないが、仕事の能力の中ではごく一部にすぎない。

一定時間で、一定量を確保しなければならないという制約のもとでは、面接を過度に信頼するのは無理がある。せいぜい、その企業にまったく合わない人だけは排除する(それも本当かどうかはわからないが)システムという程度に考えておいたほうがよいのかもしれない。

 

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