※本コラムは株式会社リクルートキャリアが外部有識者に依頼・執筆いただき、掲載しております。
≪コラムニスト プロフィール≫
辻 太一朗 (つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS
(大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会)を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、
採用・就職の”次の一手”を具体的に示すことに強みを持つ。
こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。
今回は「会社説明会」について。日々、皆さん実感されていると思いますが、
会社説明会は多大な時間と労力を要します。
せっかく手間暇かけて準備して開催するのですから、効果的な説明会、
つまり「受けてみよう」と思ってもらえる場にしたいですよね。
では、学生に「この会社を受けてみたい」と思ってもらうにはどうしたらいいのか。
そんな会社説明会を設計するための考え方を、具体例を交えながら紹介していきます。
説明会後のアンケートでは感触がよかったにもかかわらず、
「結局、選考に来る学生が少ない」「採用したい人材が応募してくれない」
という話を皆さんからよく聞きます。
なぜそうなってしまうのでしょう。
そんな皆さんの「会社説明会」は、「会社のことを総花的に説明する」説明会になっているのでは。
会社説明会だから、会社を何もかも説明して当たり前、そんな考えにとらわれていませんか。
確かに、学生に「説明会で聞きたいのは何か」をアンケートすると、
「事業内容」や「仕事内容」と答える学生が多いのも事実です。
学生からの要望が高いのだから、詳しく説明しなければならないと
皆さんは思われるかもしれません。
そう思われた方、「会社説明会」の目的は何か、いま一度考えてみませんか。
そもそも、会社説明会は何のために開催するのでしょう。
もちろん、会社への理解を深めてもらうことも大切です。
しかし、最終的には自社にとって望ましい人材に面接(次の選考段階)に来てもらうため、
「この会社を受けてみたい」と思ってもらうためのものですよね。
会社の情報を隅々まで説明することが、目的に合っているでしょうか。
会社の情報をあれもこれもと伝えてしまうと、学生にとっては印象に残らず、
忘れられていく可能性があります。
説明会の場では「この会社のことは理解できた」「詳細を聞けてよかった」
と思った会社でも、次々に別の会社の情報が入ってくると次第に忘れていきます。
しかも、説明会から面接まで1〜2カ月ぐらい間が空くため、なおさらです。
実際に応募先を絞る段階になると、印象に残っていない会社は、
学生の選択肢に入るのは難しいですよね。
特に学生が受けたい会社になかなか挙がらない認知度の低い企業であれば、
印象に残る工夫をしないと学生を惹きつけるることはできません。
だからこそ、会社説明会ではポイントを絞って、「さらに話を聞いてみたい」
「この会社の○○の部分は本当にスゴイ!」と思ってもらうための工夫が必要なのです。
それにはあえて、会社の説明や仕事の説明を事細かにしないことです。
では、会社説明会で「この会社の面接を受けてみよう」
と思われるようなメッセージは、どのように絞っていったらよいのでしょうか。
それにはまず、学生がなぜその会社を選ばないのか、 その理由の“逆”を考えればいいのです。 私は学生がその会社を「選ばない理由」は、主に以下の3つだと考えています。
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(3)についてはあえて対象にする必要はないと思いますので、(1)と(2)に絞って
対策を考えることで、「受けてみよう」と思われるメッセージが発信できるのではないでしょうか。
まず、(1)の「選ぶ理由がない」については、「その会社を選ぶための理由」を用意します。
つまり、説明会を「この会社がいいと思った理由は○○」「だから自分はこの会社にひかれた」
と思ってもらう“場”とするのです。
そのために必要なのは、他社と差別化できる自社のポイントを絞って伝えることです。
「選ぶための理由」とは、例えば「社長の魅力」「社員が熱い思いを持って働いている」
「組織のカラー」「商品・技術力」といったものです。「ここがすごい」「他社にはない」
と学生が自ら言えるようなネタを説明会で伝えていけばよいのです。
皆さんの中には「うちは会社規模も小さいし、差別化できるポイントなんてない」
という方もいらっしゃるかもしれません。
その場合は、中堅・中小ならではの違いで勝負すればいいのです。
例えば、規模が小さいのであれば、「物事の決断が速い」「顧客との接点の近さ」
「勤務地・職種が選べる」といった特徴、持ち味があるはずです。
(2)の「会社がつぶれないか不安」については、「不安」を「可能性」に転じるメッセージを伝えます。
例えば、「うちは経営が安定しているので心配いりません」というように
「不安」を「安心」に変える努力をしても、景気の先行きが不透明な現在、
ある程度の「不安」はどうしても残ってしまいます。
それより、「うちの会社は○○の技術を持っているから、これからも成長できる余地がある」
「将来は○○に海外拠点を置く予定。グローバル展開を視野に取り組んでいることは……」
といったように、「未来の可能性」を示せばよいのです。
こうして伝えるテーマを絞ったら、伝え方にもぜひ工夫を。
例えば、「社長の魅力」に絞ったメッセージを伝えるなら、採用担当者の皆さんをはじめ、
若手社員、管理職クラスなど学生と接する社員が全員、社長に関する
具体的なエピソードを口々に語るのです。
「うちの社長はとにかくハートの熱い人物なんですよ。例えば……」
「当社の社長はいち早く○○に着目して起業し、将来は○○の分野に進出することを目標にしている」
といった具合です。
そして、実際にグループ面接には社長が同席して、「皆さんからの質問にとことん答えます」
という告知をしておきます。
そうすると、学生は「社長にぜひ会ってみたい」という気持ちになります。
説明会から1〜2カ月たった後の選考でも、「印象に残る会社」として選ばれる可能性がより高くなります。
そうはいっても、仕事内容を説明しないと「学生が不安になるのではないか」
「知らないで入社されても困る」という方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。要は入社を決めるまでに理解していればいいんですよね。
面接など次の選考を、会社・仕事の理解を深める“場”として設計すればよいのです。
選考で企業が個々の学生を理解して選ぶだけでなく、学生もその企業を
深く理解して選んでいきます。
特に今年(当時:2012年卒)の学生は、早い段階から中堅・中小企業にも視野を広げています。
実際に私が見てきた大学のキャリアセンターでも、「中堅・中小企業にも目を向けてみよう」
指導に変わってきています。
皆さんには意外かもしれませんが、社会人としての経験がない学生たちは、
これらのアドバイスを素直に受け入れているんです。
だからこそ、これまで受けたい会社に挙がりにくかった中堅・中小企業にとってはチャンスです。
「心に残る」「また話を聞いてみたい」と思われるような説明会ができれば、
企業規模に関係なく、学生を惹きつけられる可能性が高いのです。
会社説明会では、「会社を説明する」という呪縛から抜け出すのは
なかなか難しいかと思います。
しかし、「この会社を受けてみよう」という気にさせるために、思い切って
「会社を説明し尽くす」説明会から、ポイントを絞って、
学生を惹きつける説明会を開催してみてはどうでしょうか。
皆さん、普段開催されている会社説明会ではポイントを絞って説明していますか。
ぜひ一度振り返ってみてください。
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