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採用の数値目標のたて方~自社の改善ポイントを数値から読み解く~

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2016年02月18日

採用活動において、数値目標の設定はとても重要な要素です。各部門からあがってきた人材リクエストをまとめて、採用したい人数を設定するだけでは、限られた時間のなかで良い人材を効率的に採用するための準備としては、十分ではありません。

自社で採用にまつわる過去の数値を管理していないという場合は、まず過去の募集経路ごとの応募数、書類通過率、面接合格率、内定承諾率などの数字を出してみることから始めてください。初めて採用活動を行うため自社に採用関連の数字がないという場合は、他社の採用成功事例を参考に、数値目標をたてていきましょう。

自社や他社の採用成功事例からシミュレーションする

会社の規模や事業内容、募集職種や人数など、要素によって数値目標は異なりますが、他社の事例を参考にシミュレーションを行うことにより、効果的な採用活動を行えます。もちろん、自社のなかで採用成功に至ったモデルケースがあれば、そのケースを前例としてシミュレーションするのが理想です。

今回は、さまざまな採用手法を活用して入社者を獲得した3社の数値事例をご紹介します。ここから採用の数値目標をたてる際のヒントを見つけ出してください。

事例1 高いスキルを満たした候補者9名と1次面接~後任者探しは役員自らが行う

オンラインでコンシューマ事業を営むA社では、システム開発部の役員が海外の子会社に出向することが決まったため、その役員が担っていた業務の一部であるプロジェクトマネジメント業務を行う後任者候補を、至急で探すことになった。

A社
【事業内容】オンラインコンシューマ事業
【従業員数】約400名
【売上規模】約100億円
【募集職種】プロジェクトマネージャー
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人材紹介会社から候補者の紹介はあったが、希望するスキルレベルを満たさない紹介であることが気になっていた。そこで、ダイレクト・リクルーティングができる転職データベースを利用し、役員自らがデータベースを検索・閲覧。後任者として仕事を任せたいと思う候補者50名超をリストアップした。このリストの人材に対し、声がけのファーストステップとなるスカウトの文章を役員自身が作成。自社の未来像や今回募集した仕事への思いを込めた内容を送信したところ、12名から返信が届いた。スカウトを送信してから2週間以内に9名と1次面接を実施し、2次面接に進んだのは3名。うち1名が内定し、入社に至った。

・スカウト送信に対する返信率:21.4%
・スカウト送信に対する1次面接通過率:5.4%
・スカウト送信に対する入社率:1.8%

■この会社では、1名を採用するのに……
約60名の人材にスカウトを送信する必要があります
約10名の候補者に1次面接を実施する必要があります
※これは転職データベースを利用した場合の数字です。他の媒体を利用する場合は媒体ごとに傾向を見る必要があります

 

事例2 初めて中途採用を実施し、11名が入社~担当社員と役員による効率的な1次面接で、脱落者を減らす~

大手老舗卸売メーカーであるB社は、新卒採用を中心として採用活動を続けてきたが、市場の激しい変化に対応するために、高いノウハウを有する外部の人材も積極的に採用することを決断した。

B社
【事業内容】製造卸売業
【従業員数】約1,000名
【売上規模】約360億円
【募集職種】営業統括 マネージャー候補
B

求人広告で中途採用の募集を行うのと並行して、転職データベースを利用して候補者と直接やりとりを行うダイレクト・リクルーティングを行った。

求人広告から応募があったのは213名、そのうち書類選考を通過したのは53名。同時に、転職データベースから人材を選定してスカウトを送信したのは52名、そのうち14名から返信があった。求人広告とスカウトにより、1次面接は52名、2次面接は35名に実施し、最終的に11名が入社した。

採用活動を進めるなか、1次面接は担当部署の社員と役員2名が行う面接に変更し、面接回数を減らした。従来、候補者は面接のために内定まで4回の来社が必要だったが、2回の来社となり、候補者の負担も軽減。脱落者の減少につながった。

・求人広告の応募に対する書類選考通過率:24.9%
・スカウト送信に対する返信率:26.9%

■この会社では、1名を採用するのに……
約5名の候補者に1次面接を行う必要があります
(B社の場合、1次面接の段階で募集経路の情報をまとめてしまっているため、これ以上の分析ができません。募集経路ごとに面接通過率や入社率を算出するためには、経路ごとの数値管理が必要です)

 

事例3 スカウト文面を改善して、10名の候補者から返信~食事をしながら社長が会社説明~

インターネットメディア事業を運営するC社では、新しいインターネットサービスを立ち上げるため、マネージャー候補として活躍してくれるエンジニアを急募することになった。

C社
【事業内容】インターネットメディア事業
【従業員数】約70名
【売上規模】約20億円
【募集職種】エンジニア マネージャー候補

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(注)1次面接以降の数字は、上段が人材紹介によるもの、下段がスカウト送信によるものを表す

これまで人材紹介を活用しながら、転職データベースに登録された人材にスカウトを送信し、母集団を形成していた。しかし、スカウトに対する返信率が非常に低かったため、求人票やスカウトの文章を改善したり、なんとしても接点を持ちたい候補者には食事などしながら、社長自らが会社の魅力、ビジョン、働き方などを伝えたりと、会社を知ってもらうよう努めた。

スカウトは126名に送信。そのうち、返信があったのは10名。1次面接は7名、2次面接は3名に行い、最終的に1名が入社。人材紹介からは10名が紹介され、書類選考は5名が通過。1次面接には4名、2次面接には2名が進み、うち1名が入社した。

・人材紹介経由での書類選考通過率:50%
・人材紹介経由での1次面接通過率:20%
・人材紹介経由での入社率:10%
・スカウト送信に対する返信率:7.9%
・スカウト送信に対する1次面接通過率:2.4%
・スカウト送信に対する入社率:0.8%

■この会社では、1名を採用するのに……
人材紹介の場合は、10名の母集団を形成する必要があります
人材紹介の場合は、4名の候補者に1次面接を実施する必要があります
スカウト経由の場合は、126名の人材にスカウトを送信する必要があります
スカウト経由の場合は、7名の候補者に1次面接を実施する必要があります


まとめ

ご覧いただいたように、これらの3事例において共通しているのが、すべての採用プロセスにおいて、次のステージ(例:応募 to 書類選考など)への移行率(例:書類選考通過率、面接通過率、内定承諾率、入社率ほか)を数値管理していることです。このように数値を管理するようになると、募集経路ごとにどれくらいの母集団を形成すればよいかを逆算することができるようになります。

もしも、前年と比較してどこかの移行率が落ちていたとしたら、そこには何らかの原因があるはずです。市況が回復して競合が採用強化している影響で他社に候補者を取られてしまっていたり、個別に送っているスカウト文面がそのときの市況や候補者の意向と合っていなかったりと、さまざまな原因が考えられます。これらの原因に対して仮説を立てて対策を講じ、検証を重ねることで、最終的な入社者数を必要なだけ確保できるようになります。採用の成功は、このように採用プロセスの数値管理から始まるのです。

補足として、事例2には改善すべき点があります。この事例の場合、1次面接の過程から、求人広告による候補者数とスカウト送信による候補者数を合わせて管理してしまっています。合算してしまうと、募集経路ごとのパフォーマンスを計測できないため、詳細な分析もできなくなってしまいます。以後の採用のためには、事例3のように、募集経路ごとに正確な数値管理をおすすめします。

上記3つの事例の移行率は、必ずしも御社のそれと同じとは限りません。母集団を形成するために集める人数やスカウトを送信するなどで声がけをする人数は、会社の規模やブランド力、求人の募集内容によって大きく変わってきます。そのため、他社事例はあくまで参考とし、自社の採用においてこれらの移行率を継続してウォッチすることで、改善に取り組む必要があるのです。

文:冨田有香

 

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