企業、そして人材のグローバル化に向けて、各企業とも益々真剣度が高まる中、
最近さらに増えてきている人材育成に関するご相談として
「グローバルマインドの醸成」がある。
会社の方向性として、グローバル=海外事業のこと、だけではなくなり、
海外赴任する人のためだけでも当然ながらなくなっている。
日本にいながらにして海外拠点のメンバーとやり取りをしたり、
またはパートナー企業とやり取りをするということが求められる場面が増えている。
または、日本国内でビジネスをしていても、クライアントが外資系企業となり、
英語で提案、報告しなければならない、ということも確実に増えている。
会社のグローバル化に伴い、自分自身をグローバル化することは「ヒトゴト」でなくなっている、
ということはこのメルマガでも何度も述べさせて頂いている。
そうした流れの中、社員が自分自身のこれからのキャリアをグローバル化の文脈で考え、
いつでもグローバル対応できるように、自分自身をグローバル人材化していくことを
提案しているセミナー「パーソナル・グローバリゼーション」を行っている。
内容としては大きく3つの構成だ。
なぜ自分自身をグローバル化すべきか、その理由 Whyを理解し、
どのような人材がグローバル人材か目指すべき姿、Whatをご紹介し、
どうすれば自分自身をグローバル化できるか、その方法であるHowを提案している。
目指すべきグローバル人材の中核要素として「ビジョナリ―・シンキング(ビジョン構想力)」を挙げている。
ビジョナリ―とは、ひらめきであり、枠にとらわれない発想であり、右脳的な働きだ。
そしてシンキングとは、その実現のために現実的な部分をロジカルに左脳的に考える力だ。
この「ビジョナリ―・シンキング」は、本メルマガでも何度か書かせて頂いているが、
リーダーシップ発揮において非常に重要だと考えている。
特に経営的な立場になるほど強く求められる。
そこで、どのようなリーダーがビジョナリ―であるのかを考える上で、
最近読んだ本に興味深い一節があったのでご紹介したい。
少し長くなるがお許し頂きたい。
「なぜビジョナリ―には未来が見えるのか? ~成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす」
(エリック・カロニウス著、集英社)
「スティーブ・ジョブズが崇拝する人物は数えるほどしかない。その数少ない一人がエドウィン・ランド。
大学を中退しながらも、偏光フィルターを考案した人物だ
偏光フィルターは、車のヘッドライトからサングラスまで、さまざまなものに使われている。
彼はインスタントカメラを考案したことでも知られるが、きっかけはこんな具合だった。
あるとき、ランドは三歳になる娘を連れてニューメキシコ州を訪れた。
そのときに娘から、どうして撮った写真をすぐに見られないのかと訊かれた。
ランドは砂漠に散歩に行き、娘の問いかけについて考えた。散歩から戻ってくる頃には、(中略)
インスタントカメラの構造を頭に思い描いていた。
『いつも最初は空想から始まる』と彼は言う。『空想するときは、まず完成した状態を頭に思い描くといい。
それから空想と現実を行き来しながら細かい部分を仕上げていく』」。
この考え方はまさに右脳と左脳がバランスよく使われていることがよくわかる。
だからこそ空想も、単なる夢物語に終わらず、実現し、実績が残せる。
では、ビジョナリ―なリーダーとはどのような人物か?
次の一節が参考になる。
「インスタントカメラの発明から40年以上が過ぎて、ランドとジョブズの対面が実現した。
場所はマサチューセッツ州ケンブリッジにあるランドの研究室。二人は会議机に向い合せに座った。
世代の違う二人だが、経歴は似ていた。ジョブズはリード・カレッジを中退、ランドはハーバードを中退している。
また、ジョブズは勤めていたゲーム会社アタリの設備を使って深夜にこっそりビデオゲームを開発し、
ランドは自分の実験に必要な機材を使うために、深夜にコロンビア大学の研究室に窓から忍びこんでいた。
ジョブズは着替えも入浴もせずにPCの組み立てに没頭し、ランドは開発がピークに差し掛かると、
食事も忘れて1日20時間働き、完成するまでずっと同じ服を着ていた。
ランドはかつてインタビューでこう答えている。
「自分にとって価値があるものには、やり過ぎるということはない。
・・・私には、全人生を賭けて伝えたいことがある。時間を忘れるくらい集中してものごとにあたれば、
自分も知らなかった能力が引き出されるんだ」。
ジョブズもよく似た発言を残している。
「この世にいられる時間は短い。・・・若いうちにたくさんのことをやり遂げねばならない気がして仕方がない」。
そんな二人のビジョナリ―が、初めて一つ部屋に揃っていた。
当時のアップルのCEO、ジョン・スカリーも同席していたが、彼は脇に座って、二人を眺めていた。
スカリーは後に自叙伝で、「ジョブズもランドも、自身の夢や発明のことを話すときは相手も見ずに、テーブルの中央を見ていた」と綴っている。
「私には、ポラロイドカメラのあるべき姿が見えていた」とランドは言った。
「作る前から、自分の目の前に存在していると思えたほどリアルだった」という
互いに何もない机をじっと見つめるので、今にもランドが作ったカメラが浮かび上がってきそうだった。
ジョブズは黙って聞いていた。その目はやはり、何もないテーブルの中央をじっと見つめていた。
そして、「わかります。私にもまったく同じようにマッキントッシュが見えましたから」と言った。
(中略)
ジョブズはスカリーに新しい製品が見えるということについて次のように言い添えた。
「まだ開発はされていないけれど、部屋に入っていってその製品について話したくなる、そんな感じなんだ。
テーブルの上に置いてあるみたいに、その製品が見える。あとはそれに実態を与えて生命を吹き込めば、それで完成だ。
まさにランド博士が言っていたようにね」。
(中略)
「二人とも、自分たちが開発した製品は以前から存在していたと話していた。
ただ、誰の目にも映らなかったものをたまたま見つけただけなのだと。」
先日、ある専門商社の役員の方とお話しをしていたところ、これからの人材に求められる要素として面白い表現をされていた。
「好奇心があること。好奇心があり、リーダーシップを発揮するやつは、自分自身の仕事のことを考えながら、
会社全体の事業も考えつつ、この事業領域のビジネスに落とし込めることはないか、と常に考えている。こういうやつは見どころがある」。
そうおっしゃっていた。
私はこの話を伺い、そうした人材がビジョナリーである素養、「見えないものを見つける」素養がある人材なのだろうと感じた。
先行きが見えなく変化が激しく、複雑、曖昧な世界である今、事業を延ばしていく上でも、
そして、優秀な人材を惹き付ける上でもビジョナリ―であることが益々求められてくる。
そのように考えているが、皆様はいかがだろうか?
答えは決して一つではないし、正解もないが、こうした人材が多い会社は夢もあり、
仕事も楽しくなる。そう考えている。