先月、欧州の名門ビジネススクールの一つである、
ロンドンビジネススクール(LBS)のディレクターを招いての公開セミナーと、人材育成ご担当者向けセミナーを開催した。
LBSは、2015年5月14日付けの日経新聞朝刊でも取り上げられていたが、
リーダー育成の分野において常に新しいアイデアや改善策を打ち出し続けていることで注目を浴びている。
例えば、グローバル化に伴い、リーダーシップのあり方についても欧米だけではなくアジア各国における比較研究するプログラムを打ち出したり、
起業支援のために事業展開に関するアドバイスや事業資金提供、女性向けの複数の奨学金制度を設けるなどしている。
結果、世界のMBAランキング(フィナンシャルタイムズ 2015年度版)ではハーバードビジネススクールに次いで2位になるなど注目されている。
同ランキングでは、例年米国勢が上位10校のうち、6~7校を占める中、欧州勢で唯一、10年続けて5位以内に入り続けている。
このLBSがリーダーシップ開発において着目しているのが、世代間による「仕事」に対する価値観の変化である。
経営者である皆さんにとっても有益なお話しではないかと思い、ここに書かせて頂く。
その変化の一つが、X世代とY世代の違いである。
ここではそれぞれの世代を以下のように定義する。
X世代=1961~1981年生まれの世代
Y世代=1982~2004年生まれの世代
Y世代はの一部は、30代に入り、企業においても中堅社員、
早ければ管理職になり始めている。
このY世代が働くにあたり大切にしている要素のベスト3は以下だそうだ。
1. ワークライフバランス
2. 組織風土
3. 昇進の機会
(LBS資料より)
1のワークライフバランスは、決して9-5時の会社で働きたい、ということではなく、
思いっきり仕事に打ち込む日、週、月もあれば、家族のため、自分のために休んだり、
就業時間を柔軟に変えることが出来る、ということで全体としてバランスが取れるということである。
2の組織風土では、どんな人と働けるか、どんなチームで働けるかということが重視されている。
そして、3の昇進の機会においても、従来のようにポジションが与えられたり、
福利厚生が充実している、といったものではなく、どんな仕事が出来るか、どう自分を伸ばす機会があるか、といった機会をより評価している。
この世代は、90%が5年以内に別の会社に移り、37%は2年以内に転職するという数字も出ているそうだ。
この世代にとっては組織への忠誠心よりも、どいういったチームで働けるか、どういったメンバーと働けるか、といったチームへの忠誠心のほうが大切である。
また、価値観としては、「昇進」そのものよりも、「進歩」をより大切にしている。
周囲から認められる、学びがある、楽しさがあるといったことであり、また将来的な価値よりも、今の価値を大切にしている。
そしてこの世代が組織のリーダーから見習いたいと考えていることは、
どのような商取引をしているか、や売上規模よりも、
リーダーの仕事に対する目的意識や意義である。例えば、
「この組織、そして世界をより良い世界にするには何を成すべきか?」といったものである。
このように外発的な動機付けよりも、内発的な動機付けの方により重きを置いている。
これはこれからの経営はもちろん、後継者育成においてもかなり重要な示唆ではないだろうか?
例えば、多くの企業は社員の英語力を高めるために、
TOEIC600点取らないと課長にしませんよ、海外出張いけませんよ。
TOEIC800クリアすると報奨金出しますよ、といった「交換条件つきの動機付け」である
アメとムチの組み合わせを提供してきた。
しかし、「モチベーション3.0」(講談社)の著者であるダニエル・ピンクによると、
「アメとムチ」には、「致命的な7つの欠陥」がある。
・ 内発的動機づけを失わせる
・ かえって成果が上がらなくなる。
・ 創造性を蝕む。
・ 好ましい言動への意欲を失わせる。
・ ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する。
・ 依存性がある。
・ 短絡的思考を助長する
確かに、アメとムチ型の施策は、あまり成果を出せていない。
上記は英語力に関してだが、それ以外の分野についても諸々当てはまるのではないだろうか?
経営者としては、内発的動機を高める仕組み作り、コミュニケーションが必要になってきている。
そして、上記のY世代の影響力は、まだまだ先の話ではない。
例えば、ここ数年かなり浸透してきたFacebook。
CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は1984年生まれでまさにY世代である。
世界中にかなりの影響力を与えている企業のトップである。
彼もFacebookの立ち上げ時には、企業を立ち上げようと思ったのではなく、
より社会的なミッション、オープンでつながった世界を作るか、
ということを意識しており、IPO時にもコメントとしては、ミッション重視であったそうだ。
これからの経営者として、世代の変化による仕事や働き方の意識の変化を上手く捉えて、
将来像を描いていかなければならないのではないだろうか。
今後の経営者のご参考になれば幸いである。