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「海外企業のM&Aは加速するが、人材育成は?」

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2016年02月15日

先日、「海外企業M&Aが最多に 国内企業、市場の縮小を見越す」という
見出しの記事が目に入った (朝日新聞 2015年2月17日)。

「2014年に国内企業が海外企業を合併や買収(M&A)したのは
前年より58件多い557件で、過去最多となった。
総額は前年より5千億円増の約5兆7740億円。
円安が進み買収には費用がかさむようになったが、
国内市場の縮小を見越して、海外市場に活路を求める企業は多い。
(中略)
地域別に見ると、アジア企業を対象にしたのが計231件で、過去最多。
(中略)
国内市場が縮むなか成長のために、円安であっても
積極的に海外企業を買収する企業はさらに増えるとみる。」

という記事だ。

2012年の515件が、バブル期の1990年(463件)を上回り、22年ぶりに過去最多を記録した、
と言われていた。2012年は円高ドル安で、1ドルが78、9円だった頃で、
買収しやすい時期だと考えられる。
しかし2013年以降円安に振れ、2014年は102、3円から始まり、年末には119円までいった年である。、
当然ながら2012年と比較して、2014年に円で買う場合は、単純に比較して1.5倍必要という計算になる。
その中で、海外企業のM&A件数、金額ともに過去最多となったということは、
日本企業各社がグローバル戦略に対してかなり本腰を入れているという証拠ではないだろうか。

皆さんも身近にこうした変化の影響を感じられているのではないだろうか。

実際、私たちにご相談頂く「グローバル人材育成研修」でも、
こうした各社のM&Aの動きに関連したものが特に2014年の後半から、
今に至るまで増えてきている。

例えば、
・買収先との協働のために、各部門の中堅社員を派遣しなければいけないが
対象層のスキル不足が見られるのでトレーニングの企画・実施

・グローバル展開を加速させるために、買収先企業を含めた
各社の次世代リーダーとの合同研修の実施

などだ。

また、これまでどちらかと言えば、若手に偏りがちだった
グローバル人材育成への投資に関しても、
買収先企業の事業運営の指揮が取れるようにと、
幹部クラスの育成に関するご相談も増えている。
また、業界に関しても、従来非常にドメスティックと考えられていた、
インフラ関連業界からの
ご相談も増えるなどの変化が見られる。

M&Aを行うメリットは、よく「時間を買うこと」と言われている。
例えば、新たな市場での販売網構築や、生産拠点の設置などには時間がかかるが、
買収先企業の資産を活かすことで、新たな投資への時間が省ける。
しかし、これらはあくまでも「エントリー」の時間であり、
「グローバル市場における成長を実現する」時間は買えない。

成長の実現には、やはり人の力が必要不可欠である。

買収先企業も最初は日本の意向を見ながら仕事をしていくので、
最初のうちはあまり大きな問題にならないが、ある程度時間が経ち
日本からの関与が少ない、日本本社くみしやすし、という印象を
持たれると勝手に動きだし、コントロールが利かなくなる、
ということが往々にして見られる。

もちろんマイクロマネジメントをすべきという話ではない。
日本国内をベースにしたとしても買収先企業のメンバーと
これからの方向性について対話し、事業を推進していくリーダーシップと
彼ら、彼女らがついていきたいと思う、共感性は必要だ。

これまでも繰り返しこのブログで話をしてきているが、
これからの時代、企業規模、業界に限らず、グローバル化と無縁で入られることはない。もちろん厳しさもあるが、協業の機会など可能性の広がりも有り得る。

このグローバル化の波を自社の価値を高める・広める上で
どう活かせるかを考えるきっかけになるのではないだろうか、
とこの話題を見て、そう考えている。

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