1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、
転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長、
『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、『就職みらい研究所』を設立し所長に就任。プライベートでは3児の母でもある。
こんにちは。リクナビ編集長の岡崎仁美です。
安倍政権が策定した『日本再興戦略-JAPAN is BACK』が発表されました。
これは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」に続く
アベノミクスの“第三の矢”と位置づけられているもので、経済政策の本丸とも表現されています。
これに先立ち、これらの成長戦略を実現するための必須条件として、
我が国の人材育成体制を抜本的に強化していく方針が打ち出されました
(我が国の人材育成強化に関する対応方針 2013.4.22)。
ここでは、教育の質の向上や就職・採用活動の問題の抜本的解決に、
官・学・産が一体となって取り組む必要が訴えられています。
そして、産業界に対して、教育の充実・留学促進などのための
「就職・採用活動時期の後ろ倒し」が要請されたことは、
人事採用に携わる皆さんの記憶に新しいところでしょう。
当初は2015年卒からと報じられたこの「就職・採用活動時期の後ろ倒し」は、
その後の検討の中で2016年卒からに着地しました。
そこで今回はにわかに熱い視線を集めている「インターンシップ」について、
リクルートキャリア『就職みらい研究所』の主幹研究員である
江田佳子が、その成功の秘訣をレポートします。
江田佳子プロフィール
1990年(株)リクルートに中途入社。以来一貫して人材関連事業に従事。営業・営業管理、
商品企画等を経た後、経済産業省からの受託事業で海外インターンシップの企画運営を実施。
以後、大学等へのインターンシップに関するコンサルティング等を通じて、
その臨床的な研究を重ねている。
初めまして、『就職みらい研究所』の江田佳子です。
今回、私自身がいくつかのインターンシップを企画から運営する中で得た知見をもとに、
インターンシップ成功のポイントをお伝えしてまいります。
まず、学生はなぜインターンシップに参加するのでしょうか?
『就職白書2013』の調査によると、2013年卒のインターンシップの参加目的の上位項目は、
「仕事理解」(64.8%)、「業種理解」(57.5%)、「企業・職場の雰囲気を知る」(39.3%)、
「企業の事業内容理解」(35.5%)となっています。
このデータを読み取ると、3人にひとり以上の学生が、インターンシップを通しての就業体験で、
「仕事理解・業種理解」にとどまらず「実際の企業や職場がどうなっているのかを確認したい」
ということを意味していると思われます。
それは、インターンシップ先を選ぶ際に重視したことからも分かります。
学生がインターンシップ先を選ぶ際に重視したことの上位項目は「業種」(58.5%)、
「インターン内容」(51.4%)、「職種」(40.3%)であり、特に、
「インターン内容」に関しては、何を知り経験できるのかへの期待の高さが伺えます。
では、学生は参加した成果をどのようにとらえているのでしょうか。
参加してよかったと思う点の上位項目は、「仕事内容を具体的に知ることができた」(60.3%)、
「業種について具体的に知ることができた」(55.4%)になっています。
これは、昨年度調査結果と順位は同様になっています。
私自身は、「仕事内容」「業種」「企業・職場の雰囲気」に関し、いずれも「具体的」に
知ることができたことに対して、学生が評価していることに注目しています。
インターンシップに参加した学生にも数多くインタビューをしましたが、その結果、
多く聞かれたキーワードは「企業」「働くこと」「職場の雰囲気」など、
「実際」をリアルに知るということでした。
例えば、「情報は、自分の工夫次第で集められる。
しかし、本当は職場の雰囲気ってどうなんだろう」「働く社会人は何がやりがいなのか」
を直接聞いたり、見ることができたことでの納得感と、
実際に接した社員の方たちへの共感性の高さで、学生の企業へのイメージが
大きく変わっていることを実感しました。
また、すべての学生が、自分が希望するインターンシップに参加できるわけではありません。
しかしながら、当初希望していた企業へのインターンシップではなかった学生が、
「この人たちと一緒に働き続けたいと本気で思えた」と答えているケースも少なくありませんでした。
では、「なぜ、学生たちはこのような感想を持つことができたのか」を解き明かす前に、
企業側でのインターンシップ実施事情を概観しておきましょう。
はじめに、インターンシップを実施する企業が増える傾向にあるとお伝えしました。
それは、政府からの来採用活動開始時期の後ろ倒し要請の影響は少なくないと思います。
では、それだけの理由でインターンシップ実施を検討する企業が増えているのでしょうか。
2012年度のインターンシップ実施目的の上位2項目は、
「学生に就業体験の機会を提供することで、社会貢献する」(72.6%)、
「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」(71.9%)となっています。
ただ、特徴的なのは、「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」
が2.4ポイント、「定型業務・プロジェクト等を明示して、学生のスキルを活用して社員に対する
活性化を促す」が3.5ポイント、増加しています。
企業側のインターンシップ実施による期待の多くは、「社会貢献」が前提の上で、
「働くことへの正しい認識醸成の機会」期待や「社内の活性化」など「業界・仕事理解」への期待が
大きいのだと考えています。
実際に、インターンシップを実施した企業へのインタビューも実施しましたが、
「社会貢献である」上で、「自社の実態をできる限り理解してほしい」
「こういう企業があることを知って」
「学生の本音が聞け、自社の魅力の伝え方のヒントを得られた」などの声はよく聞かれます。
また、既存社員に「インターンシップの企画・運営」をさせるなどによって
、社員に対する教育効果やモチベーションの向上、
働く意味の再確認などの副次的な効果が高いとの評価が聞かれました。
企業ごとの状況により、インターンシップを実施する目的は異なるかもしれませんが、
「社会貢献」であると同時に、「業界・仕事理解の促進」「社内の活性化」などの
副次的な効果への期待が高いと言えます。
今後、中長期的な視点で見た場合には、採用選考の「学生を見極める力を高める機会」
「今の学生たちをよく知る機会」として、
インターンシップを有効活用することが大切なのではないでしょうか。
学生の気持ちを変えるハッピーサイクルをつくりだす。
では実際に、インターンシップを実施するにあたり、学生の気持ちを変化させ、
企業にとって学生にとって意味あるインターンシップを実現するために、
どのような準備をしたらいいのかを少しご説明します。
前ページで述べたように、「インターンシップに参加してよかった」と答えている学生が経験した
インターンシップに共通していたことを整理してみました。
まず、はじめに、期間の長さに関してご説明しておきます。
学生が参加しているインターンシップで最も多いのは、
「3日以上1週間未満」(33.8%)、「1日」(27.5 % ) 、
「1週間以上2週間未満」(26.1%)になっています。
その意味・目的に照らして、対象学生を決め、自社の魅力をどう理解してほしいか決め、
学生につかんでほしいことを決める。これがスタートラインです。
2.プログラムの工夫: 「受け入れガイダンスの実施」「振り返りミーティングの実施」 を組み込む。
学生にどのような就業体験をさせるのか、そのプログラム自体の重要性はいうまでもありません。
しかし、インターンシップでの経験を学生たちが意味付けし、次につなげてもらうためには、
この2つをプログラム内に必須で組み込んでいただきたいと思います。
具体的には、受け入れ初日に必ず「受け入れガイダンス」を実施。
まず、お互いを知るという意味で「学生の自己紹介」「メンターや責任者の紹介」を行います。
次に、「目標設定」を実施することで参加目的を確認、「学びたいポイント」を明確にします。
その後、「学生への期待と要望」を伝え、最後にルールを伝えます。
特に、社内での過ごし方のルール(休憩・食事・その他マナーなど)なども
レクチャーしておくといいでしょう。
参加学生の学習効果と理解促進をより高めるためには、毎日の「振り返り」が最も重要になります。
学生にとっては、自分以外の他者からどう見えているのかを知る貴重な機会になります。
学生に対しては、率直に、また、些細なことでも構いませんので、
「できたこと・できなかったこと」をはっきり伝えてあげてください。
学生たちは、自分たちの気付きや経験を意味付けすることに慣れていません。
この振り返りの場でのコミュニケーションこそが重要です。「学生たちの気付きの言語化」をサポートできれば、
学生たちの理解度や満足度が大きく変わります。
そして、社員の方たちと関わった事実を再確認できることが、気持ちの変化の起点となるのです。
3.受け入れ体制の構築: 「社内への協力要請と巻き込み」と「役割分担の明確化」を行う。
インターンシップ実施に際しては、社内の協力が欠かせません。
社内の事前ガイダンスの実施(目的共有・学生への声掛け・挨拶などの受け入れ雰囲気づくり)や
プログラムの講師依頼など、会社全体で受け入れを歓迎するムーブメントをつくる工夫があると、
インターンシップがさらにいいものとなります。
また、プログラムによっては社内関係者も多くなる可能性がありますので、
社内での役割分担を明確にし、「受け入れ責任者」「メンター(教育担当)」「講師」を決め、
各役割における期待も明確にすることが大切です。
この3つのポイントは、インターンシップを実施するにあたっては、実に基本的なことかも
しれません。しかし、たとえ短期間であったとしても、このポイントが整っており、
学生に対してのスタンスが明確になっていれば、学生の気持ちの変化が必ず起きます。
下記の図のように、インターンシップをきっかけにして、
企業を知ることを起点に、理解し、体感し、それを通して、共感が生まれ、最後は感謝の気持ちへと変化するプロセス。
これを生み出すことができれば、そのプロセスを通して、学生・企業ともに充実したインターンシップとなるでしょう。
今回は、インターンシップの機会をより有効に活用するための処方箋を、簡単にご説明させていただきました。
これからも、インターンシップは進化を遂げる可能性のある場であると思っております。
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【今月の最新データはこちら】
⇒「2015年12月1日時点就職内定状況(2016年卒)」【確報版】
その他、詳しい内容はダウンロードして閲覧可能です。
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