2014年07月29日
マーサー ジャパン株式会社 組織・人事変革コンサルティング部門 山下 隆敏
「マネージャー層が育っていない」「マネジメントスキルが足りない」という話はよく聞く。具体的に状況を確認すると「アウトプットが前例や事例の焼き直しにとどまる」「なぜその取組みを行うのか、説明できない」といったレベルのマネージャーが意外と多い。このような状況を望む者は誰一人としておらず、意図的に行うわけもない。さらには、将来を期待された優秀な人材までもが、このような状況に陥ってしまっている。いったい何故なのだろうか?
原因は、マネージャーを取り巻く環境にあると考えられる。お客様からの要求水準が高まりかつ多様化し、競争が激しくなる中で、一人ひとりに求められる仕事の量も複雑さもスピードも、飛躍的に高まってきた。その結果、前例や業務知識を活用して効率的に業務を“こなす”ことが優先され、深く考えて最適なアウトプットを出す機会が業務の中から失われてしまった。長期にわたりそのような仕事の仕方を続けたために、深く考えずに“こなす”ことが身体にも脳にも染み付いてしまい、持てる力が業務に活かせなくなってしまったのである。この問題は、マネージャーの力量不足というレベルでは済まされない。マネージャーのアウトプットのレベルが上がらないために、上位職がマネージャーの業務まで下りて仕事をする。結果、本来上位者が出すべきアウトプットがでなくなる。さらに、この“考え不足”の仕事の仕方をマネージャーが部下に指示した場合、本質的に考える部下の成長は阻害されてしまう。このような悪影響が組織全体に引き起こされ、組織としてアウトプットのレベルが下がってしまうのである。この課題を解決するためには、マネージャーの[1]考える力を覚まし、活用できるようにすること、同時に[2]業務の中で考える時間を確保できるようにすることが必要となる。[1]考える力を覚まし、活用できるようにする方法
1.マネージャーの個々人の仕事ぶりをよく観察し、特徴(能力・行動様式)を把握する
2.各マネージャーのレベルに応じた論理的思考力の強化策(レクチャー+演習)を実施し、考え方を思い起こさせ、活用できるレベルまで高める
3.業務を行うなかで、「なぜ、そうなのか?」「他にはないのか?」「より高い成果を出すための工夫は何か?」など、深く考えることを継続的に突きつける[2]業務の中で考える時間を確保できるようにする方法
1.1.業務プロセス全体の効率性からマネージャーが担当していた事務やルーチン業務も、可能な限り部下やサポートスタッフに分担を見直す
2.2.マネージャーが考える仕事に集中できるよう、マネージャーを支える層を強化するために、マネージャー以下の層にも強化策[1]を実施する経営と現場の結節点にいるマネージャーが強い会社は、組織としても強い。経営層は経営に集中し、戦略実行は強力にマネージャーがリードする。そして、現場の部下はマネージャーに鍛えられ成長する。マネージャーの力量に物足りなさを感じている読者の方は、まずはマネージャーたちの仕事ぶりを見てほしい。考える時間を持つことなく、作業に忙殺されていないだろうか?本コラムが、強い会社作りのきっかけとなれば幸いである。
※本記事は2011年11月時点の記事の再掲載となります。
マーサー ジャパン株式会社 組織・人事変革コンサルティング部門 山下 隆敏
大手銀行系シンクタンク、会計事務所系総合コンサルティングファームを経て現職
国内大手~中小企業全般に対し、グループ経営管理体制の整備、BSCを活用した業績管理制度の導入・運用支援、人事・賃金制度構築を含む人材マネジメントルール整備、業務プロセス改革、シェアードサービスセンター設立等、経営管理に関する分野のプロジェクトに従事
現在は「戦略と人事の連携」をコンセプトに、戦略策定支援から業績管理制度整備、マネジメント力強化、人材マネジメント・人事制度導入まで一貫したコンサルティングを提供することでクライアントの戦略実行をサポートしている
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