ビジネスマンの上司への愚痴は、昔も今も飲み屋の定番です。しかし、愚痴の内容は明らかに変わってきているように思います。
昔の上司への不満と言えば、権力を盾にして部下を部品のように扱うことや、上ばかり見て仕事をしているヒラメ課長に対するものが多かったと思います。
では今はどうかというと、よく聞くのは「あの人はいい人だと思う。よく面倒見てくれる。でも、夢がないし、会社の経営のことも語ってくれない。大事なことも決められない。」というような声です。つまり昔は、「いい上司かどうか」でしたが、今は「自分がついていく価値を感じるかどうか」が愚痴の種になっているのです。愚痴の種の逆が、求めるリーダー像だとすれば、「仕事への情熱」があって、「タフさ」があって、「新たな道を切り開いていく行動力」がある人材ということになります。これらはリーダーに求められる要件そのものです。つまり、ついていきたくなる上司像とは、マネジメントがうまいだけでは物足りず、リーダーでなければならないのです。
ここで強調したいのは、リーダーとはリーダーシップのスキルがあるという意味ではなく、「やり遂げたいこと」がある人です。それがなければリーダーではありません。永い間勤めれば皆課長になれた時代はとうの昔に終わりました。しかし、だからといって、選ばれた人材であるはずの課長が、ついていく価値のある上司かどうかとなると別問題なのだと思います。
企業の経営陣の方とお話ししていますと「最近の我社のマネジャーは小粒になった」とか、「新任課長登用のアセスメントに社内アセッサーとして参加したが、これがほんとに課長?とびっくりした」などということもよく聞きます。
そのため今、多くの企業がリーダー欠乏症の解決のために「タレントマネジメント」に取り組んでいます。組織のあるべき姿と現状とのギャップを正しく認識し、組織と人のパフォーマンス評価をし、その上でリーダー候補者のタレント(才能)の棚卸ができることが必須となります。それができる人材の養成も必要になります。
そう考えるとタレントマネジメントが定着するには、それなりの時間がかかってしまうと言わざるを得ません。これをいかに加速させるかがこの数年の勝負です。