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途中退社させたパートの休業手当

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2015年06月05日

パートタイマーを雇用している会社では、「今日はヒマなのでもう帰っていいよ」と、パート社員に所定の終業時間よりも早く帰ってもらうことがある。もちろん、退社後の給与は支給しない。会社としては、やることもそんなにないし、時給分だけ人件費が浮くという考えである。

当然のように行っている会社もあり、気持ちもよくわかるが、これは労基法26条の「休業手当」の定めに違反する場合がある。「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、平均賃金の6割以上の手当を支払わなければならない」からである。

やることがないというのは、明らかに「使用者の責に帰すべき事由」である。休業手当を払うのがイヤなら、使用者はやるべき仕事を用意しなければならないということだ。

ところで、この休業手当、社員がマル一日休業したのなら平均賃金の6割以上を支払えばよいのだが、一日の途中で休業した場合にはいくらになるのだろうか?

具体的な事例で考えてみよう。

製造業A社で、朝の作業開始直後に、B社から納品している部品に不良が見つかった。B社へ連絡したところ在庫はなく、急いでも明朝になるとのことである。主要部品のため、ラインは止めざるを得ない。
製造に従事するパート社員には、他の仕事の手伝いや倉庫の整理などをやってもらったが、午前中にはそれも終わり、やむを得ず、午後は休業とし、帰ってもらうことにした。なお、このような部品不良のケースは、自社に直接の責任はなくても「使用者の責に帰すべき事由」となる。
A社のパートタイマーは、朝の9時から昼の1時間の休憩を挟んで17時までの勤務である。時給は1,000円で、平均賃金は7,000円である。

このときの休業手当の支給額として、妥当なものは次のどれだろうか?

① 休業手当は、1日全部の休業、あるいは一部の休業にかかわらず、平均賃金の6割以上である。したがって、このケースの休業手当は、7,000円の6割の4,200円である。

② 休業することになった午後の勤務時間は4時間であり、本来であれば、この分(4時間×1,000円=4,000円)もらえたはずだから、その6割の2,400円を支給すればよい。

③ 平均賃金の6割の4,200円が保障すべき休業手当となるが、午前中の勤務分で3,000円を支給するので、休業手当としては、差額の4,200円-3,000円=1,200円を支給すればよい。

正解は③である。休業手当の趣旨は労働者の生活保護にあるので、1日にもらうべき額の6割以上というのが基本的な考え方になる。

したがって、A社の事例の場合、午後に1,200円分の労働(時間にすると1時間12分)をしてもらった上で終業させても、会社としての負担は同じ(4,200円)となる。

見方を変えると、1日の賃金の6割分を働いているのなら、休業手当の支給なしに帰ってもらうことも可能ということだ。仕事もないのにダラダラと過ごして、ムダな人件費を払うよりは、そのような判断もすべきだろう。

ただし、これを頻繁にやると、パート社員も働きづらいし、給与計算等の管理の手間も余分にかかる。そもそも一定時間まで働くことを約定した労働契約に違反することになる。あくまで臨時的な手段と心得るべきである。

どうしても頻繁にやらざるを得ないのであれば、たとえば②で計算した額を補償として支給するなど、パート社員のモラールを考慮した措置も考えるべきだろう。

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