人事を変える集合知コミュニティ HRアゴラ

最近の目標管理のトレンド

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2015年04月03日

目標管理は多くの企業で導入されており、特に人事評価のツールとして運用されているケースが大半である。一時期、成果主義がブームとなったときに、業績評価のために導入した企業も多いのではないかと思う。

ところが、行き過ぎた成果主義に批判の目が向けられるようになり、目標管理もやり玉にあげられた。弊害として指摘されたのは、低評価を恐れてチャレンジングな目標を設定しなくなったことや、自己の目標のみに専念し部下指導やチームワークがおろそかになったこと、目標の難易度にバラツキがあって不公平感が高まったことなどである。

いずれも放置できない問題ゆえ、企業はその是正に迫られることになった。しかし、目標管理そのものを止めるのではなく、多くは制度の修正という形で対応した。

対応の仕方はさまざまだが、企業によっては、弊害の是正のみならず最近の人事の動きなども取り入れ、制度を“進化”させているケースも見られる。

どのように進化させているか、特徴的なケースとして次の3つを指摘しよう。

1.目標を上司が設定する
2.部門のミッションを明確化する
3.加点目標を設定する

これらは、実際の企業や専門誌の事例紹介などで複数見られたもので、目標管理のトレンドと呼べるかもしれない。以下、それぞれ内容を確認してみたい。

1.目標を上司が設定する

目標管理の原則では、目標は部下自身が設定するものだが、現実論として、部下に任せると毎年同じような目標を掲げたり、組織目標と関連の低い目標を設定したりして、目標管理の本質的な目的である業績向上に結びつかないという実態が見られた。その対策として打ち出された手法である。

上司が設定した目標に対して達成意欲が起きるかという懸念があるが、与えられた仕事にコツコツ努力することが得意な日本の社員には、案外抵抗なく受け入れられるかもしれない。

原則論からすれば、正確には目標管理と呼べないと思うが、名よりも実を取ったといえる。 ただ、やはり、企業の将来を支えるのに不可欠な自律型の人材を育てるにはどうかと思われる方策である。

2.部門のミッションを明確化する

個人目標が組織目標と連鎖するよう、まずは、会社や組織のミッションを明記し、はっきりと認識させておこうという仕組みである。近年、人事制度設計にあたって企業理念やミッションを重視する動きが強まっており、それが目標管理にも反映されたものといえる。

個人目標と組織目標をリンクさせるために、①よりも適切な手法と個人的には考える。 ただ、①と併用している企業もあり、そのような企業では、上司から設定された目標であっても、組織としての必要性をあらためて認識してもらうことで、コミットメントを深めるといった意味合いがあるのかもしれない。

3.加点目標を設定し評価する

これは、次の3のパターンに分けられる。

① 目標に対する頑張り度合いを評価するもの
② 当初に設定した目標以外のことを評価するもの
③ チャレンジ度合いの高いものを評価するもの

いずれも加点のみで減点はないのが原則である。部下の自己申告に基づき上司との話し合いのもと評価するのが一般的だが、上司の判断のみで加点する例もある。
チャレンジしなくなった、設定した目標以外のことをしなくなった、他の業務に時間を取られて目標が未達となった等の不具合を是正する方策となる。

①については、恣意的な運用になる恐れがあることや、頑張り度合いならば能力・行動評価でみればよいことから、個人的にはどうかと思うが、②③は頑張った成果を積極的に取り上げることで、本人のやる気を高め、組織の活性化につなげるものであり、目標管理の形骸化を防ぐためにも有効な仕組みと考える。

これらのトレンドは、今後も普及していくものと思われる。他社がやっているから自社もやるというのは、人事制度においては好ましくないが、現状、目標管理制度に何らかの問題を抱えているのならば、これら3点について、検討だけでもしてみる価値はあるだろう。

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