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「働くこと」基礎概念講座6-1 ~「結果とプロセス」どちらが大事か

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2014年11月24日

「結果とプロセス」どちらが大事か[上]

働いていくうえで、そして自分という人間をつくるうえで、「結果」と「プロセス」のどちらが大事か?―――これは難しい問題である。

ビジネスパーソンとしての私たちは皆、程度の差こそあれ成果主義の仕事現場に生きている。結果を出すことは、確かに担当する事業の利益獲得に直結しているのみならず、人を自信づけ、歓喜をもたらしてくれる。しかし、結果に執着する心は、ときに人を惑わせたり歪ませたりもする。他方、プロセスを着実に積み上げることの大事さに異を唱える人はいない。だが、プロセスに固執する心も、ときに人を無責任にしたり、自己満足に陥らせたりする。

このあたり、厳しいプロスポーツの世界で長年、非凡な結果を出し続けているイチロー選手の言葉には深く噛みしめるべき内容があるので、いくつか紹介したい。

 ○「結果とプロセスは優劣つけられるものではない。
  結果が大事というのはこの世界で無視してはいけない。
  野球を続けるのに必要だから。
  プロセスが必要なのは野球選手としてではなく、人間をつくるうえで必要と思う」。
  (『イチロー262のメッセージ』より)

これは一般のサラリーパーソンについてもまったく同様のことが言える。会社員であれば組織から与えられた事業目標、業務目標があり、それを成果として個々が達成することで、会社が存続でき、給料ももらうことができる。また、自分の能力よりも少し上の目標を立て、それを達成することで自分は成長する。

ただ、そうした結果を出すことが絶対化すると、周囲との調和を図らない働き方や不正な手段を用いた達成方法を生み出す温床となる。一経営者、一ビジネスパーソンとして巧みに競争を勝ち抜き、華々しく成功を得ている人間が、一人間として潔癖で徳があるかといえば、それはまったく別の問題だ。結果至上・成功崇拝に縛られると、人間はどこかに齟齬をきたす。だから、まっとうな自分づくりにはプロセスを丹念につくっていく作業が欠かせない。イチロー選手はこうも言う。

 ○「負けには理由がありますからね。
  たまたま勝つことはあっても、たまたま負けることはない」。

 ○「本当の力が備わっていないと思われる状況で何かを成し遂げたときの気持ちと、
  しっかり力を蓄えて結果を出したときの気持ちは違う」。

これはつまり、結果が出た(=勝った・記録を残した)からといって有頂天になるな、結果はウソを言うときがあるぞ、というイチロー選手独自の自戒の言葉だ。

プロセスが準備不足であったり、多少甘かったりしたときでも、何かしら結果が出てしまうときがときにある。そうしたときの結果は要注意だ。そこで天狗になってしまうと、次に思わぬ落とし穴にはまってしまうことが往々にして起こる。結果におごることなく、足らなかったプロセス、甘かったプロセスを見直し、次に向け気を引き締めてスタートすることが必要だ。

こう考えてくると、「結果」をめぐる問題点は、どうやら2つありそうだ。一つは、「結果を出せ!」とか「結果を出さなくてはならない」といった強要や自縛がはたらくと、結果主義はマイナスの面が強く出る。もう一つは、たまたま「結果が出てしまう」ことで、本人に慢心が起こる。この点に気をつければ、「結果を出すこと」は働くうえで重要な意識になるだろう。むしろ、結果を求めないプロセスは、惰性や無責任を生む。また、結果が出ることによってこそ、それまでのプロセスが真に報われることになる。

要は、結果とプロセスはクルマの両輪であって、どちらを欠いてもうまく前に進むことはできない。結果を出そうとすることは前輪(努力する方向感を出す)となり、プロセスは後輪(日々進んでいく駆動力)となる。

【補足】
私は管理職向けの研修で次のようなことも話に加える。

(部下に成果を求める中間管理職に対し)
成果とはその字のごとく「果(木の実)を結ぶこと」である。
果を得るには、木の根・幹・葉が丈夫であってこそ。

根・幹・葉、果に必要なものは、太陽であり、水であり、土である。
あなたのチームにとって、太陽とは何だろう? 水とは? 土とは?……
その太陽、水、土を整え、強化するのは管理職の仕事。
太陽、水、土というプロセスを豊かに整えれば、木の実は無理なく生る。

〈合わせて読みたいグループ記事〉
○6-1:「結果とプロセス」どちらが大事か[上]
○6-2:「結果とプロセス」どちらが大事か[中]~富士山の上に太陽を昇らせよ
○6-3:「結果とプロセス」どちらが大事か[下]~「成功」志向から「意味」志向へ

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