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業績連動型賞与の指標に何を選ぶか

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2014年11月14日

企業の業績に基づいて賞与原資を決定する業績連動型賞与への関心が高まっている。

2013年の産労総合研究所の調査では、対象155社のうち52社(33.5%)が導入しており、前年の31.6%に比べて導入割合が増えている。未導入の企業も、うち23.5%は現在検討中であり、さらなる増加が予想される。

業績連動型賞与を導入する際の最大の関心事は、原資を算出するための指標として何を選択するかだろう。今回は、主な指標の特徴を整理してみたい。

特徴を説明する前に、あらかじめ指標を選ぶ際のチェックポイントを4つ示しておく。これを確認することで、各指標のメリット・デメリットがより鮮明になるからだ。

①  経営目標や経営戦略等で、自社が重視している指標か?
②  社員に理解しやすいか?
③  社員の職務や成果との関連が明らかで、納得性はあるか?
④  測定の時期、把握・計算の容易性、安定性等から、賞与原資の指標として利用性は高いか?

では、主な指標をみていくことにしよう。

(1)売上高
売上高の最大の特徴は、指標として極めてわかりやすいことだ。
上記チェックポイント②の観点からみると、売上高は最適といえる。また、売上高目標を立てない企業は存在しないと思うので、①の要件も満たしている。
ただ、30年前ならともかく、現代の企業は売上高よりも利益を重視する傾向にあるので、この点は後述の営業利益や経常利益に劣ると考えられる。
売上高を重要視する業種であり、社員が直接的に売上高に関与するケースが大きい、流通業やサービス業向けの指標である。

(2)付加価値
付加価値とは会社が産み出した価値の総額で、売上高から、他社から購入した価値を引いたもの、大ざっぱに言えば粗利益のことである。
付加価値は会社の経営成果であり、成果に貢献した者に分配されることになる。つまり、社員には人件費、銀行には利息、行政には税金、株主には配当、役員には賞与、そして会社には利益留保という形で分配される。ちなみに、付加価値に占める人件費の割合、つまり社員の取り分を示す比率が労働分配率である。
メリットは、成果配分という性格を持つ賞与のベースとして、説得力があることだ。また、社員の報酬の源泉が付加価値にあることを意識づけ、価値創出の重要性にあらためて目を向けさせてくれる点もある。
一方デメリットは、付加価値を経営目標とするケースはあまりないこと、社員にはなじみが薄いこと、損益計算書に直接示される数値ではないので別途計算が必要となることなどである。また、販売管理費や一般管理費のコストダウンへのインセンティブは働かない。
そのようなこともあってか、建設業など、外注の効率活用が生命線となるような業種を除いては、それほど人気があるとはいえない指標である。

(3)営業利益
営業利益は、非常にわかりやすいのが最大のメリットだ。
また、経営計画の目標数値として間違いなく揚げられるはずである。付加価値と違って、販管費にも社員の関心を向けさせ、コストダウンの動機づけを図れる。資金運用部門などを別にすれば、社員の業務に何らかの形で関連する。営業利益は企業の本業の成績なので、それを賞与の基礎とするのも納得性が高い。P/Lで示されるので入手は容易である。
このように営業利益は、チェックポイント①~④のいずれもクリアする。業績賞与の指標として、もっともバランスがとれており、一番人気がある指標である。

(4)経常利益
営業利益と同様に非常にわかりやすい指標である。経営計画でも目標となるはずだ。また、全社員の業務に関連づけができる点もメリットである。最終利益(当期利益)に近いため、企業として安心感を持てることも挙げられる。このようなことから、営業利益に次いで人気のある指標である。
ただし、金融収支など社員の努力の及ばない数値が入るので、③の観点からは少し納得性に欠ける面もある。このため、減価償却費や各種引当金控除前の償却前利益を使うケースもある。

( 5)営業キャッシュフロー
在庫管理や売上債権管理などについての社員の努力が個別の項目にはっきり表れるので、特定部門の社員の納得性は非常に高まる。上場企業であれば、決算書の1つとして作成するので、計算の必要はない。
ただ、一般的に経営計画で目標値として重視される指標ではないだろう。当期利益が使われるので、コストダウンのインセンティブとしては弱い。CFを理解していないと納得性を得にくい点もデメリットといえる。

(6)その他‥‥ROA、ROE、EVA等
会社が戦略指標として活用していれば整合性は高く、①の面で優れている。また、P/Lだけでなく、B/Sの視点や株主の視点など、多面的な業績連動ができる。
しかし、多くの社員にとってはほとんどなじみがなく、理解も得にくいことが最大のデメリットである。また、ROAやROEならまだしも、EVAは計算が複雑な点もやっかいだ。資本の有効活用に責任を持つ、管理職向けの業績指標である。

以上はあくまで「一般論」であり、大切なのは自社に合った指標を選ぶことだ。「ウチは売上高が何よりも大事、売上高の拡大こそがすべて」という企業であれば、売上高を採用すればよい。そのような一貫性のあるスタンスは、社員の納得性を高め、業績連動型賞与の最大の狙いである業績向上にも貢献するはずである。

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