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『大々的に行われる「ブラック企業」対策』

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2014年06月26日

改めまして。吉政創成の吉政でございます。今日は私が担当しているコラムコーナーで大変人気な社会保険労務士の川島孝一先生のコラムで面白いものがあったので、ここでご紹介することにします。

川島孝一 氏
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
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ここ数年、ブラック企業という言葉を多く耳にするようになりました。ブラック企業という言葉を聞いたときに、皆さんはどのような会社を想像するでしょうか?
「ノルマを達成できないと上司に怒鳴られ、はたまた人格まで否定される」「深夜まで残業をしても一切残業手当が支払われない」といったことを想像する方が多いと思います。ブラック企業の定義というのは明確には決められていませんが、どうも労働者を酷使して使い捨てにする会社を指しているようです。
一方、仕事の性質上、経営者の方の相談に乗る機会が多くあります。相談の内容は多岐にわたりますが、「勤務中に仕事をしないでネットサーフィンをしている従業員がいて困っている」といった相談さえ受けることもあります。何から何まで会社がすべて悪く、立場の弱い労働者は会社から搾取されていると決め付ける風潮には、疑問を感じますが、たしかに長時間労働によって精神疾患を発病したり、自殺をしてしまうといった最悪の事態も見聞きします。
このような事態を受けて、厚生労働省も平成25年9月からいわゆる“ブラック企業”対策を行うことになりました。国として、今まで以上に労働関係法令違反を厳しく取り締まる方針を打ち出しています。会社の経営者の方や労務担当の方は、これを機会に就業規則や労使協定の整備状況、労働時間の管理方法などを確認し、コンプライアンス重視の経営を行っていく必要があります。
企業のほとんどはブラック企業ではないのですが、残念なことにブラック企業も少なからず存在します。また、ブラック企業ではなくても、完全に法令を遵守できている企業は極めて少なく、大多数は労働基準監督署が見れば指摘することがある“グレー”な企業と呼べるかもしれません。監督署はブラック企業に限定して調査をするわけではありませんので、「自分の会社はまさかブラック企業にはならないから大丈夫」と安心するのではなく、いつ調査が行われても対応できる体制を作る必要があります。

今回発表されたブラック企業対策では、①長時間労働の抑制を目的として重点的な取り組みを行う、②若者の「使い捨て」が疑われる企業に関する電話相談を行う、③職場のパワーハラスメントの予防・解決を推進する、の3点がポイントとなります。では、具体的に①~③を順番に見ていきましょう。

まず、①の取り組みですが、若者の「使い捨て」が疑われる企業に対して監督書による重点的な監督指導が実施されます。重点的な調査の対象になるのは、36協定(時間外労働、休日労働に関する協定)の範囲内で時間外労働・休日労働が行われているかといった労働時間に関する調査や、サービス残業がないかといった賃金に関することが中心になります。では、次にどのような企業が調査の対象になるかというと、監督署やハローワークの利用者からの通報や極端に高い離職が認められる企業です。また、監督署が独自に保有している情報をもとに労働基準関係法令違反の疑いがある企業も対象になります。ブラック企業の定義が明確ではないため、多くの会社が監督署の調査の対象になる可能性があります。
監督署の調査でチェックされる項目がいくつかありますが、必ずチェックされるのは36協定です。原則として36協定を監督署に提出していない会社は、従業員に時間外労働や休日労働をさせることはできません。有効期限切れや協定届自体を提出していない場合は、すべての残業が違法状態のまま行われていることになります。また、36協定を提出していても、記載された時間を超えて残業していた方が一人でもいれば、これもまた違法となります。
近年、長時間労働が原因による自殺や脳血管疾患等によって労働者が死亡してしまう不幸なケースが見られます。そのため、安全管理体制も必ず指導が行われるようになってきました。安全管理体制とは、労働災害を防止するために労働安全衛生法で定められている会社の安全と衛生を確保するための組織のことです。会社は、労働者の人数によって、安全管理者・衛生管理者・産業医・安全衛生推進者等を選任する義務があります。また、一定時間以上の長時間労働があった場合に医師の診断を受けさせる体制を整える義務もあります。これらの選任や整備を行っていないと指導の対象になりますので人数要件等、自社の状況をチェックしてみる必要があるでしょう。

②の取り組みに関しては、平成25年9月1日に全国8ブロックで電話相談が行われました。これ以降も、「総合労働相談コーナー」、「労働基準関係情報メール窓口」で随時電話相談等が行われます。これらの相談に基づいた情報等を踏まえて、労働関係法令違反の疑いがある企業に対して調査を行う仕組みになっています。
また、「ブラック企業対策として厚生労働省が相談窓口を創設した」と大々的に報道をされましたので、従業員から些細な事柄でも窓口に相談が持ち込まれることも考えられます。労務トラブルに発展する原因の一つに、社内のコミュニケーション不足があります。社内での密なコミュニケーションは労務トラブルを回避する重要なポイントになります。

③の取り組みに対しては、パワハラ対策としてポータルサイト「あかるい職場応援団」を通じ、パワハラの裁判例の解説、パワハラ対策に取り組んでいる企業を紹介する等の対策を講じると発表されました。
セクハラやパワハラの問題はこれまでも多くありました。セクハラ・パワハラの被害者は、会社だけではなくその行為を行った本人に対しても損害賠償請求の訴えを起こすことができます。「これぐらいだったら大丈夫だろう」と考えるのはとても危険です。管理職研修等でどのような場合にセクハラ・パワハラに該当するのか周知徹底をする必要があります。

監督署の調査が行われることになった場合には、経営者や事務担当者は迅速な対応が求められます。監督署から指導されたことが広まると、「もしかして自分の会社もブラック企業?」などと従業員が疑心暗鬼になったり、よからぬ噂が流れたりして社内の士気に影響が出ることもあります。
労基法違反が疑われる場合は、少しずつでも改善をしていくべきです。万が一企業名を公表されるなどブラック企業というイメージがついてしまうとなかなか払拭するのは難しくなります。新卒採用等にも大きな影響が出ると考えられますので改善すべき点は早急に改善していく姿勢が大切です。

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社会保険労務士の立場でブラック企業とその対策について解説いただきましたが、いかがでしょうか?ITの立場から一言言葉を添えさせていただきますと、自社社員の労働状況がどうであるかを経営者は知っておく必要がありますし、総務部や人事部の方々は状況を把握し、報告することが大事だと考えています。このような報告業務は定常的に発生するため、Excelなどの手作業での集計ではなく、電子処理による運営負荷の軽減をお勧めします。最近では、システムを導入することによって全体のコストが削減されているような事例も多く出てきています、以下のページにそのような事例が多く紹介されています。興味がある方は以下をご覧ください。
http://www.shinwart.co.jp/hr/case/dl/

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