株式会社マイナビは2024年2月8日、「正社員のワークライフインテグレーション調査2024年版(2023年実績)」の結果を発表した。調査期間は2023年11月17日~20日で、20~59歳の正社員の男女3,000名から回答を得ている。本調査から、「静かな退職」の実態や仕事と私生活との関係性、および職場環境や導入制度が仕事の充実度に与える影響が明らかとなった。なお、ワークライフインテグレーションとは、「仕事」と「私生活」を人生の構成要素として統合的に捉えて両方とも充実させ、人生を相乗的に豊かにしていく考え方のことである。
“静かな退職”を防ぐ「ワークライフインテグレーション」とは? 調査結果から見える「仕事」と「私生活」の充実の重要性

働くうえでの本音として「静かな退職をしている」との声は5割を超える

コロナ禍にテレワークが定着したことや副業の認可が進んだことで、仕事と私生活を切り離すことが以前より難しくなっている。仕事と私生活を統合的に捉える「ワークライフインテグレーション」という考え方が注目されつつある昨今、働く人は仕事に対しどのような思いを抱いているのだろうか。

はじめにマイナビは、働くうえでの本音を聞くため、「できることなら働きたくないと感じるか」と尋ねた。すると、「働きたくない」と感じている人は合計56.9%(そう思う:30.2%、ややそう思う:26.7%の計)だった。

また、「静かな退職(※)をしていると感じるか」と尋ねたところ、「静かな退職をしている」との回答は48.2%(そう思う:15.7%、ややそう思う:32.5%の計)となった。

※「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、やりがいやキャリアアップは求めずに、決められた仕事を淡々とこなすことを指す。ワークライフバランスを重視する動きが加速化したことにより注目されている働き方である。
できることなら働きたくないと感じるか/静かな退職をしていると感じるか

「私生活」と「仕事」の充実度が双方に影響を及ぼすと感じる人は7割に

続いて同社は、「仕事と私生活の充実の関係性」を尋ねた。すると、「『私生活の充実』が『仕事の充実』につながっている」が20.4%、「『仕事の充実』が『私生活の充実』につながっている」が12.4%、「相互に影響しあっている」が37.2%となり、合計70%の人が「私生活と仕事の充実に関係性がある」と答えた。

仕事と私生活の関係性の具体的なエピソードとして、“関係がある”と感じる人からは、「ライブなど何かプライベートで楽しみにしていることがあると仕事のモチベーションも上がる」(20代男性)など、私生活と仕事のどちらも充実させるために、積極的に行動しているといった声が多く見られたという。

一方、“関係がない”と感じる人からは、「仕事は仕事、プライベートはプライベートとしか今まで考えてこなかった」(50代女性)など、仕事と私生活の線引きをしている声が目立ったとのことだ。
仕事と私生活の充実の関係性

仕事と私生活の両方を追求できていない人は約4割と多数派に

次に、同社が「仕事と私生活、両方の充実を追求できているか」を尋ねたところ、「できていると感じる」は26.6%、「できていないと感じる」は39%となった。仕事と私生活について両方の充実を追求できていないと感じる人が多い結果となった。
仕事と私生活、両方の充実を追求できているか

仕事と私生活がともに充実している人は「職場の柔軟性が高い」傾向

次いで同社は、「現在の職場の柔軟性」について、場所・時間・仕事の裁量権・服装・髪型の5項目に分けて質問した。すると、「『仕事』と『私生活』両方の充実を追求できている人」は、できていない人と比べて「職場の柔軟性」が全項目において20ポイント以上高かった。

なかでも、「職場で仕事の裁量権がある」(差分:27.9ポイント)、「職場での服装の柔軟性がある」(差分:26.1ポイント)、「職場に時間の柔軟性がある」(差分:24.8ポイント)の項目で、差が大きかった。

この結果を踏まえて同社は、「『仕事』と『私生活』両方の充実を追求できていると感じる人は、仕事の柔軟性が高く私生活の時間を確保しやすいため、両方の充実を追求できていると感じる人が多いのではないか」との見解を示している。
職場の柔軟性

仕事と私生活が充実している人は、働く場所や時間を柔軟にできる制度がある傾向に

さらに、勤務先で「導入されている従業員向けの制度」を複数回答で聞くと、「仕事」と「私生活」両方の充実を“追求できている”と感じる人と“追求できていない”と感じる人で、もっとも導入割合に差があった制度は「在宅ワーク・リモートワーク制度」(差分:9.4ポイント)だった。以下、「有給取得率向上施策」と「女性向けの産育休制度」(差分:ともに9.1ポイント)が同じ差分で続いた。

「仕事」と「私生活」両方の充実を追求できていると感じる人は、在宅ワーク・リモートワーク制度や有給取得、産育休制度が利用できる職場に勤めている傾向にあり、働く場所や時間の柔軟性に影響がある制度において、導入率の差が大きいと明らかになった。
導入されている従業員向けの制度
従来よく取り上げられてきた「ワークライフバランス(WLB)」では、仕事(ワーク)と私生活(ライフ)のバランスを考え、どちらかに偏重が起きないように調整をする必要があった。一方、「ワークライフインテグレーション(WLI)」は、仕事と私生活の相乗効果を追及する考え方で、ワークライフバランス重視の働き方により増加した「静かな退職」を防ぐほか、「仕事の充実」にもつながるなど、企業経営にもメリットがあると考えられている。今後企業は、さまざまな従業員向け施策を検討するなかで、「ワークライフバランス」から「ワークライフインテグレーション」の考え方へとシフトすることが求められそうだ。
用語のイメージ図(ワークライフインテグレーション/ワークライフバランス)

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