2016年8月に発足した第3次安倍第2次改造内閣で、最大のチャレンジとして掲げている「働き方改革」。このコラムでは、「働き方改革」を実現するための手段として重要な位置を占めているテレワークについてご紹介する。
具体的には、今なぜ、「働き方改革」が必要なのか、「働き方改革」の課題とは、解決策の1つとされる「テレワーク」とは何か。地方でも都市部と同様に働くことが可能となる環境をつくる「ふるさとテレワーク」と、テレワークによる企業の生産性向上・優秀な人材の確保、テレワーク最大の課題セキュリティ問題、女性活躍推進について、分かりやすく解説していく。
第1回目では、企業だけでなく、「働き方改革」の課題でもある「長時間労働の是正」と、また育児と同様に重要な課題である「介護」について、その解決策となるテレワークについて話をする。
具体的には、今なぜ、「働き方改革」が必要なのか、「働き方改革」の課題とは、解決策の1つとされる「テレワーク」とは何か。地方でも都市部と同様に働くことが可能となる環境をつくる「ふるさとテレワーク」と、テレワークによる企業の生産性向上・優秀な人材の確保、テレワーク最大の課題セキュリティ問題、女性活躍推進について、分かりやすく解説していく。
第1回目では、企業だけでなく、「働き方改革」の課題でもある「長時間労働の是正」と、また育児と同様に重要な課題である「介護」について、その解決策となるテレワークについて話をする。
内閣府が掲げる「働き方改革」の重点課題
労働力人口が減少し、グローバル化で国際競争も激化する昨今、これまでと同じ働き方では企業は生き残ることはできない。そのためには、女性、高齢者、外国人など、どんな人も意欲と能力を十分に発揮できる組織になることが必要不可欠であり、また、働くすべての人が仕事と生活の調和を十分に実現できるようにしていかなければならない。「働き方改革」はそれらを実現すべく、様々な取組を掲げている。では、「働き方改革」とは何なのか。
「働き方改革」は大きく分けて2つある。1つ目は「男性の意識・行動改革」、2つ目は「ワークライフバランス」と「女性の活躍」の推進である。内閣府が重点課題として掲げているのは、以下の通り。
男性の意識・行動改革 | |
長時間労働の是正 | 長時間労働の抑制及び年次有給休暇の取得促進 |
人事評価制度の見直しなど経営者管理職の意識改革 | 企業経営者等の意識変革 |
出産直後からの男性の休暇取得の促進 | |
男性の育児休業の取得促進 | |
父親の育児に関する意識改革、啓発普及 | |
男性の家事育児の促進 |
「ワークライフバランス」「女性の活躍」の推進 | |
ワークライフバランスに向けた環境整備 | |
「仕事と生活の調和ワークライフバランス憲章」等に基づく取組の推進 | |
両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備 | |
育児休業の取得等を理由とする不利益取扱いの防止 | 有期契約労働者など非正規雇用の労働者に対する支援 | テレワークの推進 |
国の率先的取組 | |
女性の活躍の推進 | |
女性の職業生活における活躍の推進 | |
子育て女性等の再就職支援マザーズハローワーク事業 | |
農業経営体等における女性が働きやすい環境づくりの推進 | |
女性の幅広い活躍を推進する学び直し支援 | |
地域における女性の活躍の推進 |
このように様々な取組をあげているが、その多くは育児に向けられたものとなっており、今後、大きな課題となるであろう介護に向けたものは多くないのが現状だ。
長時間労働の課題は企業の風土文化
政府が掲げる「働き方改革」の1項目目にある「長時間労働の是正」を取り上げてみる。これはかなり前からいわれてきたことだが、実現できていない企業も多い。理由は企業の風土文化の問題である。日本の企業の殆どが、労働時間として8時間拘束する代わりに、定額の賃金を払っている以上、生産性を上げて早く仕事が終わったとしても帰ることはできない。また、早く終われば次の仕事を頼まれるから、終わってないふりをしよう、定時で帰ると仕事をしていないと評価されるから残業をしよう、さらには残業代がないと生活ができないから残業をしよう、という従業員もいる。管理職が帰らないから帰れないという者もいる。まさに企業の風土文化の問題なのである。
残業時間の話でいうと、女性が管理職を希望するかどうかも上司の帰宅時間で変わってくる。上司が定時で帰っていれば、様々なライフステージで仕事に影響が起こりやすい女性も、管理職にチャレンジしやすくなるであろう。日本の根付いた風土を切り崩すには、経営層を巻き込み、相当な覚悟で変革をしていかなければならない。
企業活動をおびやかす深刻な介護問題、テレワークという選択肢
働き方改革であまり触れられていない介護における意識改革はもっと悲惨な状況である。2014年3月に発表された厚生労働省の報告によると、2014年3月の段階で、特別養護老人ホーム待機者は52万2000人である。介護をしている人のうち、全国平均で50%以上が在宅介護をしており、企業では介護休暇を申請する従業員がいなくても、実際に介護をしている従業員は1200万人以上いるといわれている。更に今後5年間で介護する可能性があると答えた人が8割以上もいる。
全従業員の8割が介護をすることになれば、企業は機能しなくなる。従業員の両親の年齢によっては喫緊の経営課題である。人事のみが把握しているがゆえに、企業全体が課題感を持っていないと、この経営課題は見落とされることになる。育児とは異なり、年数も状態もさまざまな介護について、真剣に考える時がきたといえよう。
もう一つ忘れてはならないのが、従業員の出身地である。在宅介護は、実家に帰って介護をすることが殆どであることを、両親の年齢と共に集計し、サテライトオフィスでの勤務や在宅勤務を検討する必要がある。
テレワークの推進とは、サテライトオフィス、モバイルワーク、在宅勤務の推進のことであり、テレワーク=在宅勤務ではない。テレワークについては次回以降掘り下げてお話するとして、明日、親が倒れて実家に帰ったまま、在宅介護になった場合、介護休暇以外の対策ができている企業はまだ僅かである。これが介護離職を誘発する原因の一つとなっている。優秀な従業員が突然離職を申し出た場合、介護によるものかどうかも確認する重要な事項の一つといえるのではないだろうか。
次回は地方(ふるさと)で暮らしながら、ICTを活用して、 都市部の仕事をする「ふるさとテレワーク」について解説する。
もう一つ忘れてはならないのが、従業員の出身地である。在宅介護は、実家に帰って介護をすることが殆どであることを、両親の年齢と共に集計し、サテライトオフィスでの勤務や在宅勤務を検討する必要がある。
テレワークの推進とは、サテライトオフィス、モバイルワーク、在宅勤務の推進のことであり、テレワーク=在宅勤務ではない。テレワークについては次回以降掘り下げてお話するとして、明日、親が倒れて実家に帰ったまま、在宅介護になった場合、介護休暇以外の対策ができている企業はまだ僅かである。これが介護離職を誘発する原因の一つとなっている。優秀な従業員が突然離職を申し出た場合、介護によるものかどうかも確認する重要な事項の一つといえるのではないだろうか。
次回は地方(ふるさと)で暮らしながら、ICTを活用して、 都市部の仕事をする「ふるさとテレワーク」について解説する。
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